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( 2018.12.27 )



 自衛隊機へのレーダー照射事件で、韓国が説明をコロコロ変える。 「遭難漁船を救助中だった」 との説明にも疑問符が付く。

攻撃直前の行為


単従陣で旗艦を務める韓国の駆逐艦「広開土大王」、2008年7月撮影
 韓国の駆逐艦が日本の哨戒機に対し 「攻撃寸前の態勢」 をとりました。
防衛省の発表によると12月20日、海上自衛隊の哨戒機P1が日本海の日本のEEZ(経済的排他水域)を飛行中に、韓国海軍の駆逐艦、広開土大王(クァンゲト・デワン)から火器管制レーダーの照射を受けました。
 弾の入った銃を他人に向けたのも同然で、平時にはあり得ない行動です。 岩屋毅防衛相は12月21日 「攻撃直前の行為だ。 不測の事態を招きかねない。 韓国は説明すべきだ」 と語りました。

 共同通信の 「レーダー照射 『攻撃直前の行為』 と防衛相」 ( 12月21日 )などが報じました。


否認に転じた韓国

 韓国政府は事件を否認しています。
初めは堂々と認めたうえ 「大した話ではない」 と言っていました。 それが日本政府に追い詰められると説明を変え 「レーダーを照射したことはない」 と言い出したのです。
 12月22日までは韓国メディアに対し火器管制レーダーを使ったが、日本の哨戒機を狙ったものではなかったと説明していました。

 ところが12月22日に防衛省が 「火器管制レーダーは捜索には使わない」 と指摘。 さらには日本のメディアが 「レーダー照射は複数回で一定時間続いた」 「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」 などと意図的なレーダー使用の可能性が高いと報じた。

 そこで12月24日、国防部は 「照射」 自体がなかったと言い出したのです。 「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが、電波は一切出さなかった」 との説明に変えたのです。
● 日誌・レーダー事件で言い訳を翻した韓国
12月21日 防衛省、12月20日に日本海の日本のEEZ内で、韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射と発表。 岩屋毅防衛相 「攻撃直前の行為だ。 不測の事態を招きかねない。 韓国は説明すべきだ」 ( 共同通信など報道 )
12月22日 東亜日報、独自ダネとして 「12月20日に漂流中の北朝鮮の漁船を海軍が救助」 と報道
12月22日 統一部、救助した北朝鮮の漁民を板門店を通じ送り返したと発表
12月22日 国防部 「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するため火器管制レーダーを使ったが、日本機を狙ってはいない。 正常な作戦任務だった」 ( 韓国MBC報道 )
12月22日NHK 「レーダー照射は複数回で一定時間続く」 「偶然とは考えにくい」 「哨戒機はレーダー受けて回避」
12月22日防衛省 「火器管制レーダーは捜索には使わない。 その照射は危険な行為」 と発表
12月23日 FNNなど 「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」 と報道
12月24日国防部 「人道主義的な救助のための正常な作戦活動であり、日本機の脅威となる措置は取らなかった」 「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが電波は一切出さなかった」 「日本機からの通信はノイズが多く 『韓国海洋警察』 だけが聞きとれた」 ( 聯合ニュース報道 )
12月24日 韓国外交部 「事実を確認せず発表した」 として日本に遺憾を表明( 聯合ニュース報道 )
12月25日防衛省 「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数回受けたことを確認した」 「海自機は韓国の駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行」 「緊急周波数で韓国海軍艦艇に向け英語で3回呼び掛けた」 と発表
12月25日菅義偉官房長官、会見で韓国に再発防止を強く求めたうえ 「当局間の協議を進める」
12月25日岩屋防衛相、会見で 「照射があったことは事実。 ( 把握しているデータに関し )我が方の能力に関することは公表できないが、先方となら専門的な話もできる」

日本に逆ねじを食らわす

 なぜ、言い訳を180度変えたのでしょうか。
初めは 「日本の哨戒機に照準を合わせたものではなかった」 と言い張れば、見逃してもらえると考えたのでしょう。 しかし日本は強硬で、土曜日の12月22日にも防衛省が 「韓国の嘘」 と発表して追い打ちをかけるなど、追及の手を緩めなかった。
 出るところに出れば、韓国は国際的な非難を浴びます。 なぜなら火器管制レーダーの照準を当てることは、軍事衝突を避けるための海洋衝突回避規範( CUES=Code for Unplanned Encounters at Sea )に明確に違反するからです

 そこで国防部は 「照射せず」 と言ったと思われます。 12月24日に 「日本の哨戒機こそが我が方の駆逐艦の上を低空で飛ぶなど、危険な行為に及んだ」 と言ったのも 「CUES違反は日本側だ」 と逆襲するつもりだったのでしょう。

 外交部も助太刀に出ました。 日韓の外務省は12月24日にはソウルで局長級会議を開いたのですが、韓国側は 「事実関係の明確な確認なしに自分たちの立場を主張した」 と日本を非難しました。 ここでも逆ねじを食わせたのです。

 聯合ニュースは 「外交部、 『レーダー騒ぎ』 で日本に遺憾を表明 … 事実確認なしに発表」 ( 12月24日、韓国語版 )の見出しで報じました。

 そこで12月25日、日本の防衛省が 「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数受けたことを確認した」 と発表したのです。 要は 「証拠はある。 日本が公開したら恥をかくぞ」 と警告したのです。 韓国が言い出した 「日本の危険な飛行」 に関しても防衛省は否定しました。


人命救助に文句を言うな

 韓国紙はどう報じているのですか?
左派系紙も保守系紙も韓国政府の言い分が正しいとの前提で書いています。 そのうえで 「難癖をつけてきた」 日本を非難したのです。
 左派系紙、ハンギョレの社説 「日本、 “レーダー事件”外交争点化を意図 … 韓日外交会議時も抗議」 ( 12月23日、日本語版 )の結論は以下です。
韓国軍が故意に狙ったものではないと説明し、実際に北朝鮮船舶を救助したのに日本側がこれを争点化するのは、最近の韓日関係のためと見られる。
韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決に反発する日本が “レーダー事件” をカードとして活用しようとする意図が窺える。
 保守系紙の朝鮮日報も同様でした。 「最悪の韓日関係が見せた 『レーダー騒ぎ』 」 ( 12月24日、韓国語版 )のポイントを翻訳します。
当時漂流していた北朝鮮の漁船が我が軍に救助されたことなどを見るに、海軍が日本の哨戒機を意図的に狙った可能性はまずない。
友好国の間であれば問題になるようなことではない。 というのに日本は 「あり得ないこと」 と抗議した。
 保守系紙の東亜日報の社説も 「騒ぎ過ぎ」 と日本を批判しました。 「韓日のレーダー騒ぎ、事を大きくせず外交的に解決するべきだ」 ( 12月24日、日本語版 )からその部分を引用します。
故意性なく船舶救助の作戦中に起こったという説明にもかかわらず、日本政府とメディアが韓国海軍にまるで 「他意」 があったように追及することは度を越した反応だ。

青瓦台より日本メディアを信頼

 「言い訳」 を180度変えたことに関し、韓国メディアはどう書いたのですか?
無視することにしたようです。 そのおかしさに触れた大手メディアの記事は見当たりません。
 もちろん韓国の記者もバカではありませんから 「あれっ」 と思ったでしょう。 読者の書き込み欄を見ると、政府の説明を信じ 「日本機を撃墜すべきだった」 という反応がある半面、 「政府は見苦しい言い訳はもうやめろ」 といったものがあります。

 例えば12月24日の国防部の 「火器管制レーダーの照射は一切なかった」 との発表を報じた朝鮮日報の記事 「軍 『日本の哨戒機を追跡すべくレーダーを運用したことはない』 」 ( 12月24日、韓国語版 )の書き込みには以下があります。
言い訳丸出しの言い訳は国の威信を貶める。 左派の乗組員が戦争ゲームをしたのだ。 青瓦台( 大統領府 )のゴミどもより日本のメディアの方が信用できるなんて。
一日ごとに新しい説明を作り出す国防部の言葉通りなら結局、火器管制レーダーは北朝鮮の漁船救助作業とは関係なく、日本の哨戒機を照射したことを認めたのだ。 カメラの電源を入れれば火器管制レーダーも一緒に回ることを知っていながら稼働したということは、日本の哨戒機がレーダーに照射されようと関係ないという未必の故意があったということだ。
 いずれも、韓国政府が信じられなくなったが故の書き込みです。 そりゃそうです。 「照射した」 が突然 「照射しなかった」 との説明に変わったのですから。


突っぱねれば日本は引っ込む

 だったらなぜ、韓国紙はその変節を指摘しないのでしょうか。
初めの段階で 「韓国政府の説明が正しい」 との前提で社説を書いてしまったからでしょう。 もちろん政府の言い訳が180度変わったことを基に、社説を軌道修正する手はあります。
 ただ、 「我が海軍は北の漁船を救け、それを日本機が邪魔しようとしたのだ。 火器管制レーダーを使ったとしても、正当防衛だ」 と信じている人も多い。

 今になって記事を修正して政府批判すれば 「国家反逆新聞」 の烙印を押されかねない。 メディアとすれば、この問題が収束するのを待つ方がいいのです。

 根っこには 「突っ張っておけば日本はあきらめて引っ込む」 との判断があります。 これまで日本は韓国の滅茶苦茶な行動に怒って見せても、さしたる報復はしなかった。 だから今度も、適当なことを言ってうっちゃっておけばいい、というわけです。

 ところで北朝鮮の漁船を助けたというのは本当ですか?
レーダー照射した韓国の駆逐艦が救助したのではありません。 海洋警察の警備艦が助けたのです。 海軍の駆逐艦も一緒になってレーダーで捜索し実際には、警備艦が救ったと発表されています。
 もっとも、北朝鮮の漁船を助けるためにわざわざ駆逐艦が出動したというには不自然です。 遭難海域に海洋警察の警備艦がいたのですから。


漁船救助に駆逐艦が出動したって?

 趙甲済チョ・カプチェドットコムを舞台に、ファンド・ビルダーのペンネームで外交・安保を縦横に論じる識者もこの点に首を傾げました。

 「海軍 『火器管制レーダー照射』 に関する疑問点」 ( 12月24日、韓国語 )です。 その部分を抄訳します。
 韓国政府とメディアは 「広開土大王」 が北朝鮮の漁船救助活動に出動したことを既成事実化しているが、本当だろうか。 北朝鮮の警備艇がエンジン故障で漂流していたのなら、重大性を考慮して駆逐艦が出動するのは理解できるしかし小さな漁船が漂流して駆逐艦が動員されたとの説明は理解し難い
 海洋警察がそばにいなかったというならまだ分かるのだが。 あえて海軍が出なければならない状況だとしても、機動力の良い高速艇が出るのが正常である。
 ファンド・ビルダー氏はもう1つ 「位置」 に関しても疑問を呈しました。 これも要約しつつ訳します。
 各紙の報道によると、漂流した北朝鮮の漁船の位置は大和碓の北西だった。 一方、日本の哨戒機はかなり離れた日本のEEZ上空を飛んでいた。 「広開土大王」 はその中間にいた。
 漁船とは真反対の位置にいた日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射したことになる。 だとすると照射時間はどんなに長くても数秒のはずだが、なぜ数分間に至ったのか。 この事件は 「漁船の救助」 を名分に言い逃れできる事案ではない。

文在寅なら怒らない

 結局、レーダー照射の意図は何だったのでしょうか?
安全保障の専門家も韓国の専門家も、現場による嫌がらせと見る向きが多い。 「広開土大王」 の艦長かレーダー担当兵が、上部の指令なしに跳ね上がって犯行に及んだとの見方です。
 韓国では 「日本には何をやってもいい」 という風潮があります。 ことに21世紀に入り韓国が日本を見下すようになってからはそれが強まった。

 韓国海軍にしても 「旭日旗を掲げるなら国際観艦式に来るな」 と言ってみたら、日本はろくな抗議もせずに引き下がった。 竹島で演習しても抗議するだけ。 これなら 「射撃管制レーダーで脅して追い払ってやれ」 と考える艦長や兵が出てくるのは当然です。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の指示はなかった?
それは分かりません。 ただ、上からの直接の支持はなかったとしても、犯行は大統領に大いに関係します。 現場がレーダー照射により日本との関係を悪化させても、日本との対決姿勢を明確にする文在寅政権なら処罰しないと誰もが考えるからです。

日本を日本海から追い出す

 文在寅政権下ならではの事件というわけですね。
そうです。 しかし今後は大統領が誰であろうと、こういう事件が起きる可能性が高い。 なぜなら韓国は日本海を自らの海としたくなったからです。
 日本海にはメタンハイドレートが大量に眠っていて、日本が自らのEEZ内で採取し始めたのが悔しくて仕方ない。

 また、韓国海軍は2020年からミサイル発射型の潜水艦を配備しますが、その 「巣」 としても日本海は重要です。 黄海は浅くて潜水艦の運用は難しいし、そもそも中国が海上優勢 ― ―昔の言葉で言えば制海権を維持している。

 韓国とすれば明治以来、日本海で羽振りをきかせてきた日本を追い出したい。 11月20日にも、韓国の海洋警察の警備艦が日本のEEZ内で日本の漁船に操業中止を命令した事件が発生しています。

 だからレーダー事件を 「現場の跳ね上がり」 と見過ごすわけにはいかないのです。 火器管制レーダーを照射された日本の自衛隊機は退避せざるを得ない。 それを繰り返していけば、日本のEEZもその空域も韓国が支配できるのです。
● 韓国の 「対日挑発」 日誌( 2018年10月以降 )
10月1日李洛淵首相、韓国主催の国際観艦式に参加する自衛艦に旭日旗掲揚の自粛を要求
10月5日日本、観艦式への自衛艦の派遣見送りを決定
10月11日観艦式で韓国艦は伝統的な 「将旗」 も掲揚。 参加国には国旗のみの掲揚を求めていた
10月30日韓国・最高裁、新日鉄住金に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
11月20日韓国海洋警察の警備艦、日本のEEZ内で日本漁船に操業中止を命令
11月21日韓国・女性家族部、 「和解・癒し財団」 の解散手続きに入ると発表
11月29日韓国・最高裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
11月29日韓国・ソウル中央地裁、新日鉄住金に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月5日韓国・光州高裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月13-14日韓国軍、竹島周辺で防衛演習
12月14日韓国・光州地裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月20日日本海で韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射( 12月21日に防衛省が発表 )
12月24日元・朝鮮人労働者、新日鉄住金の資産差し押さえに関し 「執行日は外交状況を考慮する」

相次ぐ 「愛国事業」

 そんなに簡単にいくでしょうか。
放っておけば、これが 「初めの一歩」 になります。 2018年10月以降だけでも、これだけ日本を挑発しています。 ただ、それらは韓国から見れば、日本との関係を見直し、権利を拡大する 「愛国事業」 なのです。
 日本企業に対し、戦時中の朝鮮人労働者に慰謝料を支払えと韓国の裁判所が相次ぎ判決を出したのもそうです。 日韓国交正常化の際に結んだ基本条約を否認するものです。

 「和解・癒し財団」 解散も、日本との慰安婦合意を反故にする狙いです。 文在寅政権のこうした動きに対し、保守派からもさほど批判はあがらない。

 日本との関係が悪化しさらには米国との同盟が揺れると懸念する向きは一部にある。 しかし敢えて約束を破り、日本を従わせる 「愛国事業」 である以上、保守も文句はつけにくいのです。


核武装に必須の日本海

 韓国の保守系紙がレーダー事件で自らの政府を批判しないのも……。
「愛国」の部分もあると思います。 日本のEEZを韓国がコントロールできるようになれば、国益が大きく増進します。
 そもそも2020年以降、毎年1隻ずつ配備するミサイル潜水艦だって 「韓国の核」 の一環として保守政権が始めた事業なのです。

 文在寅政権の 「南北共同の核」 のための配備とは主体が異なりますが、核武装に必須の第2撃能力を持つという点では同じです。 その 「巣」 作りには、保守だろうが左派だろうが、韓国人なら賛成しておかしくないのです。





( 2018.12.27 )


 韓国海軍の艦艇が、自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件は、韓国軍兵士による 「指揮命令」 違反、事実上の反乱である。 正常な軍隊ならば絶対に起こり得ない事態だ。 韓国政府内は大揺れで、軍最高司令官でもある文在寅大統領の権威と正統性はズタズタとなった。 日本政府は、日米韓3国による調査を求めるべきだ。


海上自衛隊の哨戒機P-1。今回、火器管制レーダーを照射されたものの同型機
 韓国の大統領は、韓国軍の指揮命令系統を厳重に監視してきた。 軍首脳によると、理由の第1は北朝鮮との戦争を防止するため。 軍が勝手に北朝鮮に攻め込んでは困る。

 第2に、クーデターを警戒してきた。 韓国軍の部隊は、クーデター防止のためソウル方面への後退移動は禁止されている。 また、師団以上の部隊が移動する際には前後左右の隣接師団へ通告することが義務づけられている。

 国防省や陸海空の軍参謀総長の要職に、有能で人望ある軍人を決して任命しない。 大統領への忠誠心を持つことが、選抜における最大の条件だ。 さらに、各部隊には 「保安担当」 の政治将校を配置し、司令官と部隊将校らの動向に目を光らせてきた。

 ところが今回、韓国軍の統制力のなさが世界に知られるところとなった。 平時に、海軍艦艇の兵士か、将校、艦長、あるいは海軍首脳が 「照射命令」 を出したのだから、 「指揮命令」 違反であり事実上の反乱だ。 文在寅大統領の最高司令官としての責任が問われる。 軍を統治する政権の能力が問われる極めて衝撃的な事件である韓国政府が、 「レーダー照射でない」 と嘘をつく理由が、ここにある


北朝鮮の漁船を救難するため、という嘘

 日本の世論は、レーダーを照射したことを韓国が正直に認めて謝れば済む話、と思うかもしれない。 けれども、韓国を覆う政治文化の下では、認めるわけにはいかないのだ。 軍最高司令官としての文大統領の権威とメンツは、丸潰れになる。 だから、 「遭難した北朝鮮漁船の捜索」 と、まったく辻褄の合わない説明をした。

 韓国国防省は、レーダーを照射した事実について 「気象条件が良くなく、遭難した北朝鮮漁船を探すため、すべてのレーダーを稼働させた」と説明した。 この説明は、納得できない。 火器管制レーダーは志向性が高く捜索には適さない。

 そもそも、海軍の艦艇に北朝鮮の漁船を救助する任務が与えられているのか。 それも、何十人乗りの大型船ならともかく、数人しか乗れない小型漁船だという。 漁船の救助は、日本でも韓国でも海上保安庁の任務だ。 海軍艦艇は、あくまでも防衛 ―― 北朝鮮の艦船の侵入を防ぎ、工作船を摘発する ―― が任務だ。

 仮に、救助が任務であったとしても、遭難漁船の救助と探索を支援するよう北朝鮮から要請があったわけではない。 北朝鮮政府が要請してもいないのに、韓国海軍は、北朝鮮漁船の救助を自主的に任務にしたのだろうか

 百歩譲って、漁船を装った北朝鮮の工作船対策や、北朝鮮タンカーによる石油 「瀬取り」 の取り締まりなら、まだ納得できる。 でも当時は 「気象条件が良くなかった」 ( 韓国国防省 )というから、海上での瀬取りは難しかっただろう。


支持率の回復が狙いか

 レーダー照射が、韓国艦艇の勤務する兵士の反乱でないとすれば、誰が命令したのか。 考えられるのは、大統領側近が命じた可能性だ。 文在寅政権は、支持率が50%を切り48%に落ちた。 歴代政権で、支持率が40%台に落ちてから回復した例はない。 ソウルの政界では、1年後の2019年の年末には30%台に落ち政権が崩壊するとの観測も出ている。

 ということは、文在寅政権が進める南北首脳会談や徴用工判決は、支持率上昇にまったく効果がなかったわけだ。 韓国の国民は文在寅大統領と革新・左翼勢力による 「反日・親北朝鮮政策」 に、ソッポを向き始めたのだ。

 この危機的な状況を回避するために、権力周辺が日韓関係を悪化させる 「作戦」 に出たのではないか。 日本との軍事的な衝突を演出し、 「不当な言いがかり」 と反論し 「日本の悪意」 を宣伝すれば、世論が一致団結し、文在寅政権への支持が回復すると考えたのだろうか。


「遺憾の表明」 ですませれば、日本はまた甘く見られる

 文在寅政権を巡る韓国の政治状況を理解した上で、日本はいかに対応すべきか。 事実を確認し、原因と責任を厳しく問い、再発防止を徹底すべきだ。 ただし、その一方で、韓国民を刺激しないよう 「政権と国民の分離戦略」 を取る。

 この時、日米韓3国の共同調査を考えてもいい。 日韓による調査は韓国が嫌がる可能性がある。 米国も入れば、公平性を保つことができるだろう。

 韓国政府は、国民の 「反日感情」 を煽ろうとしている。 報道機関を動員し 「P1哨戒機が韓国海軍艦艇に低空で異常接近した」 と報道させ、 「日本の対応は騒ぎすぎ」 と説明した。

  日本としては、韓国側の主張が事実でないことを証拠で示し、反論すべきだ。 「あまり追いつめない」 「うやむやにしよう」 との考えを抱かないことだ。 「遺憾の表明」 は単に 「残念だった」 の意味にしかならない。 日本はまた甘く見られる。

 今回の事件が、韓国政府にとって政権の威信を揺るがす大事件である事実を、我々は十分に理解すべきだ。


主敵のいない軍隊の行き着く先は

 韓国軍は、保守と左翼の間で政権が変わるたびに軍首脳や幹部を大幅に入れ替えてきた。 報復人事が横行した。 このため、軍の士気は低下していると言われる。 今回の事件の背景に、韓国軍のこうした崩壊現象があるのかもしれない。

 金大中・盧武鉉の親北朝鮮政権は 「北朝鮮は韓国軍の主敵ではない」 との理解を進め、文在寅政権はこの方針を明確にした。 韓国軍はいま、 「敵のいない軍隊」 になっている。 この現実が、米韓同盟を崩壊に向かわせている。 共通の敵が存在しない米韓同盟は、維持できなくなる。 韓国軍と政権が抱える闇は深い。





( 2018.12.27 )

   


 12月20日に発生した、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射事件。 常識的な抗議を行った日本に対し韓国側は筋が通らぬ弁明を繰り返していますが、そもそもなぜこのような事態が起きてしまったのでしょうか。 その背景には 「日本に対する韓国の見くびり」 があり、韓国を勘違いさせてしまった責任は日本側にもあるからです。

 レーダー照射は 「ムクゲの花を咲かせたい」 韓国の野心を表している


韓国の専門家 「もし韓国軍が日本からレーダーを照射されたらより深刻な対応」
 12月20日、日本の排他的経済水域内の公海上である石川県能登半島沖で、海上自衛隊のP-1哨戒機が韓国海軍の広開土王級駆逐艦によって火器管制レーダーを照射されるという事件が起こりました。

 いわば韓国海軍の駆逐艦によって、攻撃のためのロックオンされたということになります。 これは 「攻撃動作」 であり、どう考えても敵対行為で、反撃されても文句が言えないほどの行為です。

 実際、朝鮮日報は、 「同じことを韓国軍が自衛隊からされたら、もっと深刻な対応を取るだろう」 という韓国側の専門家の意見を載せていました。 要するに、韓国軍なら同様のことをされたら即時攻撃するということです。

 日本側は韓国の駆逐艦に意図を問い合わせましたが応答がなく、その後の日本政府の猛抗議に対して韓国側は、 「レーダーを運用したが日本の哨戒機を追跡する目的で使用した事実はない」 「遭難した北朝鮮の捜索のために火器管制レーダーを可動させたが、瞬間的に日本の哨戒機が入り込んできた」 などと例によって言い訳をくるくると変えて弁明。 韓国の軍関係者は海上自衛隊の哨戒機のほうが威嚇的だったとまで言う始末です。
レーダー照射 防衛省幹部が韓国に 「証拠あるため言い逃れやめるべき」
 日本の防衛省が証拠があると発言し、火器管制レーダーが作動していたことを指摘すると、 「火器管制レーダーの横にある光学カメラだけを作動させた」 などと言い繕っています。
韓国、レーダー照射を否定 譲らぬ日本 「分析の結果だ」
 日本側は、韓国側がレーダーを5分間、2回にわたり照射したことや、火器管制レーダーは捜索用に適さないことなどを挙げて反論。 すると韓国軍関係者や一部の韓国メディアは 「日本の反応は行き過ぎ」 と、こちらも例によってあたかも日本側がおかしいかのような、反論にならない反論を繰り広げています。
日本の対韓悪感情、 「照射」 機に出た … 韓国紙
 「徴用工」 への判決にしてもそうでしたが、自分たちが反論できない事柄については、 「騒ぎすぎ」 だとして相手の責任にし、被害者ぶるのが韓国の常套手段です。 今回のことにしても、 「安倍首相が支持率挽回のために反韓感情を利用した」 という見方をする韓国紙すらあります。

 しかし、支持率のために常に反日感情を煽ってきたのは韓国のほうです。 李明博は竹島に上陸し、朴槿恵は告げ口外交に終止し、文在寅は慰安婦合意を反故にし、徴用工問題を煽ってきました。

 すでに文在寅の支持率は46%まで下落し、不支持が支持を上回っています。 その原因は、最低賃金を大幅に切り上げたことによる企業の業績圧迫、それにともなう雇用低迷と国民の生活苦といった国内の経済問題ですが、国民の不満が高まっているだけに、日本に対して融和的な姿勢など取れない状況となっています。
文在寅韓国大統領 「不支持」 が 「支持」 上回る 政権発足後初
 それどころか、むしろ文在寅大統領は、日本との関係を意図的に悪化させようとしているとしか思えない態度を取り続けています。 徴用工問題での最高裁判決に対して何ら方策を打ち出さないこともそうですが、朴槿恵政権時の慰安婦合意にかかわった官僚たちに対して懲罰的人事を行っているため、日韓関係良化のために働こうという人材がほとんどいなくなっているのです。
完全に干された韓国の 「ジャパンスクール」、対日調整はますます困難に
 12月24日付の朝鮮日報では、 「日韓関係のために懸命に働いたという理由で積弊扱いされ左遷されるだけでなく、捜査対象になるとすれば、懸命に務める人などいない。 両国間で懸案の調整を行うルートが消滅しかねない」 と懸念する日本の外交筋の発言が掲載されていました。

 そのような状況を反映して、これまで公館ランクが最も高く人気の赴任先だった在日韓国大使館ですら、勤務希望者を3人募集しても応募者が1人もいないという事態となっています。 これは外交部創設以来初めての事態だそうです。

 こうした文在寅政権の反日姿勢が、 「徴用工問題」 での最高裁判所の判決に影響したとしても不思議ではありません。 そもそも現在の最高裁長官は文在寅大統領が指名したリベラル派です。 「徴用工裁判」 で日本企業が敗訴すれば日韓関係が崩壊に向かうことは明らかだったにもかかわらず、そのような判決を導く人材を長官に据えたのです。

 そして、まさに韓国軍でも同様のことが起こっている可能性があります。 文在寅政権の反日姿勢を読み取り、日韓関係を改善するより、むしろ関係に亀裂を入れたほうが出世できると考えて行動する者がいてもおかしくありません。

 しかも、日本の場合は専守防衛のため、ロックオンされただけでは攻撃できません。 相手から撃たれてはじめて反撃できるのです。 韓国軍も当然、そのことはわかっているはずです。 だから日本側をナメてロックオンなどというふざけたことをしてくるのでしょう。 かつて中国海軍も自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射したこともありました。

 このようなことを考えれば、10月に韓国で行われた国際観艦式で、日本の旭日旗掲揚を控えるように要請する一方で、韓国海軍が李舜臣を称える 「抗日英雄の旗」 を掲げるという、きわめて非礼な暴挙に出た意味も理解できます。

 とはいえ、韓国軍は不祥事続きで、事故も多発しています。 12月4日には、朝鮮日報が 「軍、これでよいのか」 という記事を掲載して、韓国軍の訓練中に起こった迫撃砲の誤射を批判しました。 これに対し、南北融和による安全保障体制の変化によって、軍部の弱体化や規律の乱れを指摘する声も出てきています。
韓国軍はこれでいいのか?味方部隊に迫撃砲弾落下、韓国ネットからも不安の声
 そんな韓国軍が、挑発のために攻撃動作を行ったとして、いつ誤動作を引き起こしてしまってもおかしくありません。 身の程知らずの火遊びほど、怖いものはありません。

 韓国の歴代大統領のほとんどが、暗殺されたり逮捕されたり、自殺するなど、ろくな末路を辿らないことは、よく知られている事実です。 朴槿恵も李明博も逮捕されました。

 文在寅も同様の末路を迎えるのかどうかはわかりませんが、文在寅政権は前政権を崩壊に導いたうえで誕生したという、きわめて 「易姓革命」 に近い形で成立した左翼政権です。 いわば 「革命政権」 ですから、いくら日韓が過去に約束し、協定や条約を結んでいても、すべて否定するのが 「革命政権」 というものです。

 加えて、もともと日本を仮想敵国にしている韓国では、いずれ南北が共同して日本を攻撃するということを夢想する意見や小説が少なくありません。

 その代表格といえるのが、1994年に韓国で出版されて250万部を超えるベストセラーとなった金辰明著の小説 『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』 です。 その内容は、韓国を侵略しようとする日本に対して北朝鮮と韓国が同盟を組んで撃退、さらに東京、大阪などの5つの都市に核ミサイルを撃ち込むという話です。

 核ミサイルは韓国人の温情によって無人島に当てられますが、日本は降伏し、多額の賠償金を支払い、竹島の領有権を放棄、韓国が対馬を植民地にすることが決まります。

 荒唐無稽な内容ですが、このベストセラー小説は映画化もされて賞も受賞するなど、韓国人の心性にフィットしていることが伺えます。 つまり、敵は北朝鮮ではなく日本であり、日本を懲らしめ、やっつけることが韓国人にとっての 「正義」 であり、ルサンチマンの解消だということなのです。

 ちなみにムクゲというのは韓国の国花であり、この小説において 「ムクゲの花が咲く」 というのは、韓国が日本を攻撃し打ち負かすことを意味しています。

 なお、日本統治時代以前の朝鮮半島は、はげ山だらけでした。 燃料のためや、焼畑農業のために森林が伐採され尽くしたからであり、山々が無残な地肌を露呈していた様子は、イザベラ・バードら、李氏朝鮮時代末期に朝鮮半島を旅した西洋人たちの記録にも残っています。

 新渡戸稲造は朝鮮半島を 「枯死国」 と呼んでいましたが、そのような朝鮮半島に植樹し、緑を蘇らせたのが日本でした。 現在の韓国で咲いているムクゲも、日本が再生させたものだと言われています。
 それはともかく、 今後、 日本の対韓国姿勢は大きく変更せざるをえないでしょう。 日韓友好を叫びながら、 日本批判や日本攻撃を繰り返す韓国は、 何をやっても日本は怒らないと見くびっていることは明らかです。 だから韓国では、 日本は韓国の都合よく利用する対象であるという 「用日論」 が流行るわけです。

 このように韓国を増長させてしまったのは、 日本側にも責任があります。 何度ゴールポストを動かされても、 日本は忍耐強く韓国のワガママに付き合ってきました。 そのことが、 韓国を勘違いさせてしまったのです。

 すでに韓国の勘違いは、 両国間の軍事的一触即発を招くほどまでエスカレートしてしまいました。 ここで日本が断固たる姿勢を見せなければ、 韓国の勘違いはいつまで経っても治らず、 さらに最悪の事態を招くことになるでしょう。





( 2018.12.28 )




韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」から火器管制レーダーを照射された海上自衛隊のP-1哨戒機
 12月20日、石川県・能登半島沖の日本海で韓国海軍の駆逐艦 「広開土大王」 ( 満載排水量3900トン )が海上自衛隊のP-1哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件で、日本国内の反韓・嫌韓感情が高まっている。

 韓国国防省は 「哨戒機を追跡する目的で( レーダーを )使った事実はない」 と弁明しているが、日本側は韓国艦が意図的に約5分間にわたってレーダー照射を続けたとの見方を強めている。

 24日、外務省の金杉憲治・アジア大洋州局長は韓国外交部の金容吉東北アジア局長に抗議したが、韓国側が主張を改める気配はない。


 火器管制レーダー照射は 「模擬攻撃」


海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した韓国海軍の駆逐艦
 どこが問題かというと、火砲やミサイルを照準するための火器管制レーダーを照射することは 「模擬攻撃」 と呼ばれ、相手が反撃すれば武力紛争になりかねないことから固く戒められているからだ。

 大雑把に言えば、軍艦のレーダーには艦船を見張る対水上レーダー、航空機などを見張る対空レーダー、対空・対水上を兼ねる三次元レーダー、そして火砲やミサイルを照準するための火器管制レーダーの4種類が装備されている。 対水上レーダー、対空レーダーにも、それぞれ対空、対水上モードを備えたものもあるようだ。

 韓国側が言うように、北朝鮮の船舶を捜索するのなら基本的には対水上レーダーを使うはずで、三次元レーダーや対水上モードを備えた対空レーダーを使ったのであれば、それを説明できなければならない。

 韓国国内では 「日本は過剰反応だ」 といった声が出ているようだが、火器管制レーダーの照射がどれほど重大なことかは、2013年1月の中国艦による海上自衛隊への2回にわたる事件を通してみると理解できるだろう。


2013年1月、中国海軍のフリゲートから火器管制レーダーを照射された海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」
 中国艦による最初のレーダー照射は2013年1月19日午後5時頃、尖閣諸島の北120キロの東シナ海上で起きた。 当時、海上自衛隊第6護衛隊所属の護衛艦 「おおなみ」 ( 満載排水量6300トン )は28km離れた海上を遊弋中の中国海軍のジャンカイⅠ型フリゲート 「温州」 ( 満載排水量3800トン )に対して、SH-60哨戒ヘリコプターによって偵察活動を行っていた。 この哨戒ヘリに対して、 「温州」 から火器管制レーダーが照射された。

 2回目のレーダー照射は1月30日午前10時頃、同じ海域で中国海軍のジャンウェイⅡ型フリゲート 「連雲港」 ( 満載排水量2393トン )が海上自衛隊の護衛艦 「ゆうだち」 ( 満載排水量6100トン )に対して行ったものだ。

 このとき、日本のマスコミはいまにも 「東シナ海海戦」 が勃発しそうな論調で報じたが、2つの事件の間には11日間にわたる中国側の 「沈黙」 があったことは、意外にも知られていない。

 中国海軍は今回の韓国海軍と同様、反日感情あるいは 「いたずら心」 で照射したのだと思われる。 そして、日本は強硬な姿勢を示さないとタカを括っていたフシがある。

 しかし、このときばかりは違った。


 レーダー照射を受け中国艦に護衛艦を肉薄させた海上自衛隊


レーダー照射を受け中国艦に護衛艦を肉薄させた海上自衛隊
 事件当時、ほとんど報道されることはなかったが、最初の哨戒ヘリに対するレーダー照射を受けて、海上自衛隊は護衛艦 「おおなみ」 を中国艦から3キロの海域まで前進させたのだ。 ただちに撃沈できる態勢をとりつつ、相手の出方を探るためである。

 最初のレーダー照射が日本を挑発し、戦争を仕掛けるような性格のものであれば、護衛艦に詰め寄られた中国艦はさらにレーダー照射を繰り返しそうなものだったが、護衛艦を待っていたのは沈黙したままの中国艦の姿だった。

 これは中国艦の立場で考えれば容易に理解できることだ。

 1回目のレーダー照射は、うるさくつきまとう海自のヘリを、あたかもハエを追い払うように退散させるためのものだったと考えてよい。 それまでなら海自のヘリは退散し、それ以上の展開など考える必要がなかったからだ。

 ところが、哨戒ヘリに対するレーダー照射のあと、思いもよらず2倍以上の図体の日本の護衛艦が肉迫してきた。 中国側にとって想定外の展開だったろう。 最悪の場合、戦闘が起きることも覚悟しなければならない状況だった。 しかし、この事態への対応を判断する権限は、中国艦の艦長を統制する立場の政治将校にはない。 共産党中央軍事委員会にお伺いを立てたのは言うまでもないことだった。

 これもあまり知られていないことだが、中国の軍事組織には陸軍でいえば連隊以上の部隊、海軍なら戦闘艦艇には 「2人の指揮官」 が配置されている。 ともに同じ階級の部隊指揮官と政治委員( 政治将校 )である。 政治委員は共産党中央軍事委員会の統制のもとにあり、部隊指揮官は政治委員の承認なく作戦行動を取ることはできない。 これは、共産党によるシビリアンコントロールであり、軍が共産党に反抗しないための歯止めでもある。

 そして、それから11日後に行われた護衛艦に対する2度目のレーダー照射こそ、共産党中央軍事委員会の判断だったと考えられる。

 血気にはやる現場を沈静化させるために、一定の冷却期間を置かなければならないが、沈黙したままでは中国海軍としての面目を保つことはできない。 そこで、軍事衝突を招かないレベルで反応するという、練りに練られた策略として1発だけレーダーを照射して再び沈黙した可能性がきわめて高いのである。

 中国の立場で考えれば、東シナ海で軍事衝突が起きた場合の相手は日本と米国である。 中国の軍事行動が一線を越えた場合、米国は絶対に看過することはない。 日米との紛争には世界的な戦争にエスカレートする要素が含まれているから、事態の展開によっては中国に進出している国際資本が逃げ出してしまいかねない。 これは中国がもっとも怖れる 「天安門事件」 という悪夢の再来である。

 そして2回目のレーダー照射事件の直後、人民解放軍内部の対日強硬論にクギを刺すかのように、共産党最上層部から戒めの言葉が繰り返された。 その理由もまた、中国の立場にならないと理解できないことだろう。


 対日強硬論を戒めた劉少奇の息子

 対日強硬論を戒めたのは劉源上将( 大将 )。 劉少奇元国家主席の子息で1951年4月生まれ。 習近平国家主席の幼なじみというばかりでなく、対米・対日強硬派として知られ、習主席の腐敗摘発の先頭にも立ってきた盟友である。 その劉上将はレーダー照射事件直後の2月から3月にかけて、次の点を強調した。

 劉上将はまず、党機関紙 『人民日報』 系列の 『環球時報』 ( 2月4日付 )に、 「戦略的チャンスの時期を確保せよ ―― 戦争は最後の選択」 という論説を寄稿した。

「戦略的チャンスの時期」 とは、鄧小平が示した概念で、世界大戦の危険がなく、中国が経済発展に集中できる時期を指している。 そして劉上将は独自の避戦論を展開した。
「中国の経済建設は日清戦争と日中戦争によって中断された。 今も偶発事件から戦争が勃発して、中国の経済建設が中断される危険があるが、それは中国の成長を恐れる米国と日本のわなであり、陥ってはならない」
 また、劉上将は 「戦争は軍人にとって唯一の選択だが、国家にとっては最後の選択だ」 と指摘、鄧小平の 「韜光養晦」 ( 低姿勢を保ち、力を養う )という方針や、 「臥薪嘗胆」 「韓信の股くぐり」 の故事のとおり、外国の挑発に乗らずに国力を養うことを強調した。

 尖閣諸島についても、劉上将は全国人民代表大会( 全人代 )初日の3月5日、 「鄧小平の方針に従い、知恵のある世代が現れるまで紛争を棚上げすべきだ」 との見解を記者団に披露している。

 要約するなら、 ①日米との戦争は中国の利益にならない、 ②中国の発展は戦争をしていない時期に実現したことを忘れるな、 ③尖閣諸島問題を棚上げにして、戦争を回避せよ、 ということになろう。 いずれもレーダー照射事件から1ヵ月の間に行われた発言である。習近平国家主席の意向と考えてよいだろう。

 これを見れば、東シナ海における中国の行動が日米との軍事衝突を避ける形で展開されている理由を理解できるはずだ。

 事件翌年の2014年4月22日、中国青島で開かれた西太平洋海軍シンポジウムには河野克俊海上幕僚長( 現・統合幕僚長 )ら21カ国の海軍首脳が出席したが、 ①レーダー照射、 ②砲身を向けた威嚇、 ③低空飛行による威嚇、 の3項目の禁止で合意した韓国海軍も出席している。 この合意事項は、南シナ海における中国艦船の行動でも遵守されている。

 その合意を今回の韓国駆逐艦は破ったことになり、艦長以下の処罰はもとより、国家を戦争の危機に直面させかねなかったという点で、鄭景斗国防相の更迭もありうる事態である。 鄭国防相は前合同参謀本部議長。 航空自衛隊の指揮幕僚課程と幹部高級課程を修了した知日派として知られる。

 韓国駆逐艦のレーダー照射に戻れば、現在の韓国では徴用工問題などで反日感情を煽る動きがあり、それが海軍にも波及していることが事件によって明らかになった。 その韓国が、中国に倣って国内と軍内部の反日感情の沈静化を実行できるか、そして事実上の謝罪を行うことができるか、さらに日本が冷静かつ毅然たる姿勢で臨むことができるかどうか、日韓両国の国際的評価が分かれる問題として世界が注目している。

 年末の段階では、日本政府は韓国側の火器管制レーダーの周波数などのデータを手に、動かぬ証拠を突きつけながら、相手を最後まで追い詰めない形で外交的な勝利を手にする姿勢を貫いている。 そこだけを見ると、日本外交もかなり成長した印象があるが、狙い通りに韓国側が動くかどうか、目を離すわけにはいかない。





( 2018.12.29 )


 韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射が、日韓のゴタゴタに新たな火種を加えている。 言い逃れの余地がないほど証拠はそろっているが、韓国政府は苦しい言い訳を連ねている。 何が起きているのか。 「 『日本には何をしてもいい』 という韓国国内の空気感が影響したのではないか」 と指摘する ――

なぜ無理筋の言い訳ばかりを重ねるのか

 2018年12月20日午後、能登半島沖を飛行中の海上自衛隊のP‐1哨戒機が、韓国海軍の 「クァンゲト・デワン」 級駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた。 同じ自由主義陣営に属し、朝鮮半島有事の際は協力して事態に対処することになるはずの友邦の軍用機に対し、非常識な行動としか言いようがない。 しかも、韓国側は事後対応において、出任せの嘘ばかりを並べている。

 まず韓国側は、遭難した北朝鮮の船舶を探すためのレーダーは使用していたが、日本の哨戒機を追跡する目的で火器管制レーダーを照射した事実はないと主張している。 だが、通常の捜索用レーダーと、火器管制レーダーとでは、電波の性質が全く違う。

 一般的な捜索用レーダーは、アンテナを360度回転させながら、艦艇の周囲をぐるりとスキャンする( つまり、当てられる側から見れば断続的に電波を照射される形になる )。 それに対して火器管制レーダーは、指向性が高くパルス幅の狭いビーム波を、目標に対して連続的に照射し、速度と位置を高精度で把握するものだ。 周波数の違いもあり、照射された側がこの二つの電波を取り違えることはありえない。 事案当時のデータも当然海自が保存しているだろう。

 さらに韓国側は、P‐1が韓国艦の上空を低空で飛行したとも主張している。 これは海自が公表した、問題の駆逐艦の鮮明な画像を見ての主張だと思われるが、これは図らずもP‐1の光学式観測装置の高性能ぶりを示すものだろう。

 韓国側の姿勢にいよいよ業を煮やしたのか、12月28日夕方、防衛省は事案当時のP-1からの撮影動画を公式サイトで公開した。 動画にはP-1が国際法や国内関連法令で規定されている高度・距離を取りながら、韓国海上警備庁の警備救難艦、木造漁船とおぼしき小型船、救助用のゴムボート二隻、そしてクァンゲト・デワン級駆逐艦を撮影していたところ、火器管制レーダーの照射を感知した模様が克明に記録されている。

 韓国国防部は 「捜索のために火器管制レーダーを使った」 と主張していたが、動画には警備救難艦によってすでに救助されつつある小型船がはっきり映っており、もはや 「捜索」 の必要がなかったことは明白だ。 韓国側が 「通信強度が微弱で聞こえなかった」 「コリアコースト( 海洋警察 )という単語だけを認知した」 としていた、照射の意図を問うP-1から韓国艦への呼びかけも、艦番号を名指しする形で3種類の国際緊急回線を使ってクルーが明確に行っている。

 韓国側の苦しい弁明をことごとく否定するようなビデオだが、この期に及んでも韓国国防部の報道官は 「日本側の主張に関する客観的な証拠とはみられない」 「事実関係をごまかしている」 と主張。 問題が収束する見通しは全く立たない状況だ。

 いずれにせよ、韓国側は言い逃れができない状況だ。 どうにも言い逃れようがないから、出任せを言うほかないということなのかもしれない。


自衛隊機と韓国艦は、どこで何をしていたのか

 ではなぜ、このような常識はずれの事案が起きたのか。 事案発生当時、問題の韓国艦は日本海中央部の大和堆に近い日韓中間水域( 11月15日に起きた日韓漁船衝突事故の現場付近 )にいたとされる。 韓国艦は当該海域で、北朝鮮の木造漁船( しばしば工作船としても使われる )の監視と、通常の訓練を行っていたと思われる。 韓国側が主張する 「北朝鮮漁船の救難活動」 も、あったとすればその中で行われたのであろう。

 一方、海上自衛隊のP‐1は能登半島沖の、日本の排他的経済水域( EEZ )の上空にいたとされる。 当該機は厚木の第4航空群の所属で、こちらも厚木航空基地から日本海側へ進出し、そこから日本の領海線に沿って回る通常の哨戒活動をしていたと思われる。

 具体的には目視( 光学式観測 )と対水上レーダーによる、海上哨戒活動である。 P‐1の水上レーダーは非常に高性能で、海上に浮かぶ多数の船舶の大きさや形、動きなどをすべて把握できる( 一説には、水面から数センチほど顔をのぞかせた潜水艦の潜望鏡さえも探知できるという )。 そうした性能を使って、北朝鮮船による沖合での瀬取り行為( 安保理決議違反である )の監視も行っていただろう。

 つまり韓国艦も自衛隊機も、お互いに通常の任務中であったといえるだろう。 その中でなぜ、あのような事案が発生したのか。


「味方です」 の警告を手動で解除?

 おそらくは韓国艦が何らかの監視活動、あるいは救難活動を行っているときに、P‐1哨戒機の航路に過剰に反応したのではないか。 軍艦は常に、周辺の航空機の動きを対空レーダーで監視しており、軍用の敵味方識別装置( IFF )や民間用のトランスポンダを用いて、レーダーでとらえた航空機がどこに所属するのか、友軍か否かも把握できる。 ここまでは、どんな艦でも行う問題のない行為である。

 だが、火器管制レーダーの照射は違う。 ビームが目標に照射された時点で、いわゆる 「ロックオン」 という、艦の射撃指揮システムが目標を正確に把握した状態が成立する。 照射された航空機では、システムが画面表示と警告音によって、ロックオンされた事実を乗組員に伝える。

 2013年に中国海軍のフリゲート艦が海自の護衛艦に火器管制レーダーを照射したときもかなりの騒ぎになったが、 「友軍」 から照射されるというのは、意味不明としか言いようがない状況だったろう。 そういう状況のもとでも、防衛省が公開した動画ではP‐1の乗組員は終始冷静で、レーダー波の周波数確認を含む必要な任務を高い確度で遂行していたのが印象的だ。

 もっとも、実際にミサイルを発射できるシークエンスにまで入っていた可能性は低い。 艦のシステムがIFFで友軍機と認識した航空機を、ミサイル攻撃の目標に設定することは基本的にできない仕組みになっているからだ。

 だがそもそも、友軍機に火器管制レーダーを照射する段階で、途中のシステムの警告( 味方だが大丈夫か、といった確認を求められる )を手動でオーバーライドする必要があり、そこに何らかの 「人為」 が働いたことは間違いない。 その人為を、誰が行ったのか。


艦長クラスの上級幹部の命令か

 火器管制レーダーを操作するのは、艦のCIC( 戦闘指揮所 )の射撃管制員だが、通常は艦長あるいは副長の命令がなければ照射は行われない。 少なくとも、自衛隊で言えば砲雷長や砲術長など火器管制に関わる幹部の指示が必要だ。 さらに火器管制レーダーを使用しているという事実は、CICの全員に伝わる。 末端の人間がこっそりやれるような行為ではないし、誤って照射した場合はすぐに制止が入る。 もしそのような事象であれば、 「レーダー員のミスだった」 と韓国側が公表して謝罪すれば済む話であったろう。

 おそらくは、もっと上の階級の人間が関わっているために、そうした簡単な処理ができないということであろう。 交戦規則などの武器使用に関する規定をここまで無視できるのは、やはり艦長か副長クラスなのではないか。 「のぞきやがってけしからん、ひと泡吹かせてやれ」 と、そのクラスの人間が命令したというのが、一番ふに落ちるシナリオだ。

 国際的な慣習において、公海上の軍艦は旗国( 帰属する国家 )以外のいずれの国の管轄権も及ばない、一つの独立国と同等の扱いを受ける。 その艦長の権限と責任は、いわば一国の主に等しい。 もし艦長あるいは副長クラスの上級幹部が今回のような暴走を行ったのだとすれば、韓国軍には指揮統制上の重大な問題があるということの証明になってしまう。

 実際、韓国側のこれまでの対応を見る限り、韓国国防部も大統領府も、何が起きているのかを把握する能力がないように見える。 文民統制や軍の指揮統制という面から見れば、末期的症状をきたしているといっていい


反日教育の 「毒」 が回った世代が軍の幹部に

 「クァンゲト・デワン」 級のような旧型艦は一般に、若手艦長の最初の任官先になることが多い。 そして 今の韓国の若手の職業軍人は、反日教育の 「毒」 が回った世代だ

 7~8年前、陸上自衛隊のある駐屯地での式典のことだ。 式典の開始に伴い国旗の掲揚が行われている最中、その駐屯地に留学で訪れていた韓国軍の若手士官が、私服姿の友人らしき人物とずっと私語をしていた光景を思い出す。 たとえ敵対する国に呼ばれたときでも、他国の国旗には敬意を表すのが軍人の常識なのだが、世話になっている留学先でこういう非礼を働く世代が士官になっているというのが、韓国軍の現状なのだろう。

 今回の事案の背景には、文在寅政権のもと韓国国内でますます高まっている 「日本には何をしてもいい」 という韓国国内の空気感の影響もあるのだろう。 そして西太平洋の安全保障体制の中で日本と韓国のつなぎ役を果たしてきたアメリカは、韓国との同盟関係を加速度的に細らせつつある。 韓国が軍事政権から民政に移行して以来、長年にわたってありとあらゆる工作活動を韓国で展開してきた北朝鮮にとって、これら日韓 / 米韓の離間はまさに望み通りの結果のはずだ。

 そして当の韓国軍は、本来なら優先順位がはるかに高いと思われる北朝鮮軍の南侵やミサイル攻撃に備える装備より、強襲揚陸艦やイージス艦、弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射可能なミサイル潜水艦、射程500キロ以上の新型弾道ミサイルといった、日本への対抗を主眼とするかのような装備の充実に力を入れている。 日本にしてみれば、朝鮮半島への軍事侵攻などもはやありえない選択肢だが、韓国国民の認識は異なり、それが軍内部にも反映しているのだろう。

 調





( 2018.12.31 )

……

 年末の忙しいときに、とんでもないニュースが入ってきた。 20日(木)午後、能登半島沖で、海上自衛隊機P-1が韓国海軍駆逐艦から火器管制レーダー照射されたという。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html

 その後、韓国側は 「レーダー照射はしたけど発表しないでほしい」 「悪天候、視界不良で、遭難船を捜索していた」 「捜索中に日本の哨戒機が威嚇して低空で上空に入ってきた」 「やはりレーダー照射してない」 と、二転三転するグダグダの反論を繰り返していた。

 これに対して、防衛省は冷静に反論してきた。 その様子は、25日の岩屋防衛大臣の記者会見や、防衛省の反論( 22日 / 25日 )などをみればわかる。

 しかし、韓国側がこれらに真摯に向き合わないため、一向に埒があかない。 その中で、日本のマスコミの中でも、韓国側の意見をそのまま伝えるような 「悪質な印象操作」 ともいえるようなものも出てきた。


 28日昼のNHKニュースがそれだ。 岩屋防衛大臣が、レーダー照射をされた証拠となる映像を 「午後にも出す」 というニュースの中で、上の映像が一定時間の間、放映されたのだ。 あたかも、韓国の発表どおりに 「韓国海軍の上空を海上自衛隊P-1が飛行している」 かのようだ。

 これは、明らかな合成写真である そもそも哨戒中のP-1が車輪を出しているはずない。 こんな合成写真を使用したNHKの放送意図がさっぱりわからない。

 さすがにこの放送は酷かったので、今もNHKのウェブサイト上では、画像が差し替わっている。


公開を批判するのはなぜ?

 それでも、韓国は 「レーダー照射はなかった」 「この映像は客観的な証拠ではない」 としらを切っている。 「英語が聞き取れなかった」 「電波が微弱」 という見苦しい言い訳もしている。

 映像を見ればわかるが、確かに英語は流暢ではないが、コミュニケーションにはまったく支障がないレベルだし、もし聞き取れなかったとしても、日本側が三つの周波数を用いているにもかかわらず、韓国側が無応答のはずないだろう。

 軍事機密があるので、完全に客観的な証拠が開示されているとはいえないとしても、これを見ればよほどの韓国びいきの人以外は、韓国側が悪いと思うだろう。

 それにしても、前述のNHKをはじめとする一部のマスコミの報道はふがいない。 何に気を使っているのか知らないが、合成写真を使うほどではないにせよ、正しいことを伝えているものが極めて少ない。

 こういう時に、防衛省がマスコミを通さずに YouTube で直接映像を公開するのはいい方法だ。 従来は役所の情報を独占することでマスコミは優位性を保っていたが、このように役所が直接情報を発信するようになれば、そのようなメディアはまったく用なしになる

 情報を官庁が自分たちで出すようになれば、マスコミ側も自分たちで独自の報道をしなければならなくなるが、情報源が断たれたためなのかなんなのか、首をかしげたくなるような報道が目立つ。

 その一例が、28日の時事通信 「渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も-映像公開」 だ。

 これを一部のマスコミが取り上げているが、記事中にもあるように、菅直人・民主党政権時に起こった、尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁の船の衝突事件の時に、菅政権は動画を公開しなかった。

 この不手際が問題となり、国民から批判を浴びたことはそう簡単に忘れられることではない。 このときの教訓からすれば、公開するのが当たり前である。 それなのに、安倍総理がゴリ押しして公開を進めたような印象を与える記事だ。


過去に似たような事例はあったが…

 今回のレーダー照射事件に限らず、何が何でも 「安倍総理が悪い」 に持っていこうとする一部マスコミや一部識者の意見は、ちょっと度をして酷いと言わざるを得ない。

 そういえば、今回の動画公開を批判する人たちのなかには、特定秘密保護法や自衛隊の日報問題では 「情報公開せよ」 と叫んでいた人たちとかなり重なってみえる。 これは、彼らが二枚舌であることを示している。

 今回公表された動画などをみれば、悪いのは韓国側であるが、それにしても、これまでの対応の稚拙さを見ていると、韓国の危機管理体制にかなりの不安を抱いてしまう。 実は、その方がある意味では心配している。

 事件発覚後の26日朝、ラジオ番組でこの問題を解説した。 そのときには 「韓国側の説明が二転三転して一貫性がない」 と説明したが、事件直後に、防衛関係者から詳細な情報を得ていた。

 そのため 「いずれ韓国側に非があることが判明するので、韓国側は現場のミスと謝罪し、関係者を処分すべきだ」 といった。 詳細を教えてくれた防衛関係者も、韓国がそうすれば大きな問題には至らないという認識だった。

 ところが、韓国側は現場のミスを認めるどころか、映像が公開されても認めようとしない。

 実は、韓国以外にも似た事例は過去にあった。 1987年の 「対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件」 だ。 日本の領空を侵犯したソビエト軍偵察機に対して、自衛隊が実弾警告射撃を行った。 日本はソ連に抗議し、 「ソ連は計器故障による事故」 として関係者を処分した。 その後もろもろのやり取りはあったが、基本的にはソ連側の処分をもって終わった話だ。

 ここからもわかる通り、おそらく韓国が 「偶発事故」 として関係者を処分していれば、それで終わった案件だろう。 もしも韓国側が、 「日本が映像記録を残していないだろう」 と考えていたなら、現状認識不足は致命的である。

 そうではなく 「日本政府はまさか映像を公開しないだろう」 というような、日本に対する甘えが、現場にも政府上層部にもあるのだろう。 これは、決して友好国として望ましいものではない。


なぜ韓国はごまかし続けるのか

 このように推測しているが、もしもこのほかに、韓国側に 「正直に言えない理由」 があるのだとすれば、それは日韓関係においてかなり重症である。

 そのことについて、28日の読売新聞で、興味深い記事があった。 それは、韓国が日本海周辺で密漁していたと思われる北朝鮮の漁船を日常的に救助していたからというものだ。 これは、確定的証拠はない仮説にすぎないが、確かに防衛省が公表した動画とも整合的である。

 現場の能登半島沖は、好漁場の 「大和堆」 の周辺で、北朝鮮漁船によるイカの密漁で問題になっているところだ。 「大和堆」 は、平均1750メートルと深い水深の日本海にあって、浅いところで、好漁場になっているが、ここは日本の許可なしでは漁ができない排他的経済水域内である。

 しかし、この数年、大和堆の海域には中国や北朝鮮の漁船が大量に押し寄せ、密漁をしているのは周知の事実だ。 水産庁の取締船や海上保安庁がそれらの漁船を追い出しているが、手が回らない状態だ。

 北朝鮮は、現在国連の経済制裁を受けているので、石油は手に入りにくいが、大和堆にやって来る漁船は、北朝鮮軍からの石油割当を受けているはずなので、軍の指揮下にあるとみていいだろう。

 その北朝鮮の密漁漁船を韓国軍が(日常的に)救助していたとすれば、国連の制裁決議を北朝鮮に課している国際社会は 「韓国が北朝鮮の国連制裁決議の尻抜けを手助けしていた」 というように見えるだろう。

 ひょっとしたら、韓国がひた隠しにしたいのはこのことなのかもしれない。 日本の海上自衛隊に見られたくないものを見られたから、そのシラを切り続けるために、日本に強硬な態度をとり続けているのではないかと疑ってしまう。

 真相の解明は翌年に持ち越されたが、日本は毅然とした態度を取り続けることが重要だ。