( 2014.02.22 )

  
    


 韓国の通信社 「ニューシース」 が最近、 「朴正煕元大統領は米軍慰安婦管理の総責任者だったという虚偽事実を含む映像がインターネットで広まっている」 と報じた。 「夫婦学校」 という韓国の性教育団体の校長が同通信に対して明らかにしたという。 だが、記事で 「虚偽」 と断定された内容をめぐり韓国国会はすでに、証人や文書資料に基づいて審議。 昨年は問題を担当する女性家族省の大臣が真相究明を明言しており、問題の存在は否定し難いのだが ……。




 ニューシースの記事は 「親日派米国人がユーチューブを通じ、朴正煕大統領が米軍慰安婦を管理していたと騒いでいる」 というもの。 発信者は匿名で伝えているが 「テキサス親父」 の名で知られる米国人男性が1月23日にアップした動画を指しているとみられる。

 校長は投稿について 「国家情報院はもちろん大統領府、安全行政省、警察庁、放送通信委員会などのインターネットサイト関連の政府部署は、サイトの存在さえ知らないままだ」 と指摘。 動画が 「これ以上広がる前にネチズン( 「ネット市民」 の韓国語略語 )が結集して反韓行為をする外国人を懲らしめなければならない」 と、サイバー攻撃をうかがわせる抗議活動を呼び掛けている。




 だが、 「テキサス親父」 の投稿を 「虚偽」 とするのには無理がある。 韓国の国会ではこの問題をめぐる政府の責任をめぐる議論が、2012年、2013年と2年連続で実施され、 「朴正煕元大統領が米軍慰安婦施設を管理していた」 ことはもはや、国会議員やメディアの誰もが知る事実と言っても過言ではない。

 2013年11月には野党民主党の兪承希議員が国会国政監査でこの問題を取り上げ、韓国政府が米軍慰安婦施設を管理していたとする文書資料を示して追及した。

 監査後、兪議員は報道資料を発表。 そこには 「朴正煕軍部が 『米軍慰安婦』 管理 朴大統領直筆決裁書類が存在」 「1977年基地村浄化政策 『( 大統領 )閣下留保分特別基金』 から支援措置」 「監禁治療遂行、性病管理所設置条例案公開、無理な監禁治療で死亡も」 ── などと明記されている。

 質疑で兪議員は女性家族省の趙允旋長官に対し、 「国連の委員会で日本の慰安婦に関して歪曲された歴史を正さなければならないと演説されたとうかがいました」 「( 米軍慰安婦に関しても )歴史歪曲にならないように強く対応していただければと思います」 と切り出した。

 趙長官は今年1月にフランスで開かれたアングレーム国際漫画祭に乗り込んで日本による慰安婦問題を強く指弾するなど韓国政府における対日慰安婦追及の “第一人者” として評価が急上昇している閣僚であるが、その質疑の様子はこんな具合だった。
兪議員「米軍慰安婦という言葉を耳にしたことはありますか? 昨年( 2012年 )の国政監査で米軍慰安婦、( 慰安婦の集団居住地域である )基地村の女性のために活動している団体の代表を参考人として迎え、詳しくお伝えしました。 その際、長官もいらっしゃいましたか」
趙長官「いいえ。 前任の長官がおりました」
兪議員「1962年11月、( 売春行為を禁ずる )淪落りんらく行為等防止法が制定されました。 ところが、基地村における売春が合法というレベルを超え、国が非常に組織的に主導していたという証言と証拠があります」
 兪議員はこう指摘すると、 「基地村浄化対策」 と題された文書を提示。 国立公文書館に当たる国家記録院から取り寄せたものだとして説明を始めた。

 「書面の右側上段に大統領の欄があり1977年5月2日付で署名があり、朴正煕大統領の直筆とされています。 基地村浄化政策に、大統領のサインがあるのです」

 文書には米軍慰安婦の集団居住地域である 「基地村」 は62ヵ所あり、売春で生計を立てていた女性を 「外国軍相手生計者」 と呼称。 その数は9935人と記載されている。




 朴正煕元大統領の直筆署名の文書はさらに、基地村の 「浄化政策」 の課題にも及び、韓国政府は以下のような検討項目を挙げていたとされる。
( 1 ) 慰安婦を検診し、国連軍の駐屯地域の慰安婦のうち、性病保菌者を割り出して収容、治療、および保険、教養教育を実施
( 2 ) 淪落女性のアパート建設、浄化対策とともに性病撲滅、周辺環境の整備、生活用水の確保
( 3 ) 資金が確保できなかった場合には閣下保留分特別基金からの支援で措置
 「特別支援所要額」 として当時の金額で2億7600万ウォンを要するとして 「閣下特別基金」 をあてると記載。 韓国政府が、米軍が利用する慰安施設でる基地村の管理に神経を使っていた状況をうかがわせるのだ。

 兪議員は文書を分析して 「( 朴正煕 )大統領が直接、浄化対策を立て、閣下特別基金で未確保予算に支援措置をするという事業が、基地村浄化作業の内容に含まれている」 とし、政府が米軍慰安施設を直接管理していたと指摘した。




 兪議員は文書の分析とは別に、基地村問題を独自に調査しているが、それによると、各自治体には国家方針を具体化するため、条例まであったという。 以下は、その部分の質疑である。
兪議員「1996年に廃止された東豆川の性病管理所では、建物の中にスケジュールが張られていました。 女性の起床から掃除、検診、教育、食事、就寝まで( 施設での生活は )まるで監獄そのものです。 以前の国政監査の際にも支援団体の関係者が証言していますが、基地村の女性は( 慰安婦となった )当時、政府関係者から直接依頼を受け、米軍を慰安してドルを稼ぐ愛国者と何度もほめられた と話していたとのことです。 国が責任を取らなければならないのではないかということです。 前任の長官はこの証言を受け、基地村に関して実態調査をするとお答えになりましたが、趙長官は何か聞いていますか」
趙長官「現在、私どもは( 慰安婦 )密集地域の女性に対し、売春の被害者の女性に行うリハビリ支援をしています」
≪ 国の鈍い動きにいらつく野党議員 ≫
 質疑の中で兪議員は、前年の質疑がまったく反映されていないことにあきれている。 趙長官の答弁の歯切れは、ますます悪い。
兪議員「来年( 2014年 )には必ず、基地村の女性に関する実態調査と真相究明に関する事例調査、研究調査事業を終わらせなければならないと思います」
趙長官「70年代の基地村対策に関してはこの資料以外に資料がなく、流れを把握しきれませんが、文書は淪落女性に関し、淪落行為等防止法に基づき違法との前提で、被害支援という視点で作成されたものと考えられます。 ご指摘の通り検証作業を行って参りたいと思います」
兪議員「基地村浄化対策に国が関与したという事実そのものを否定するのですか」
趙長官「いいえ、そういうことでは ……」
兪議員「淪落行為等防止法があるにもかかわらず、国が基地村浄化対策として、大統領の署名まである文書を作成し、このような対策を講じたのではないのですか」
趙長官「違法な売春に関する浄化整備計画の一環ではなかったか、と思います。 さらに綿密に検討します」
兪議員「あまりにもつじつまが合わない答えです。 大統領の署名まである具体的な記録が国家記録院の大統領記録館から発見されているのです。 昨年の国政監査で、前長官は研究、調査、綿密に検討するとおっしゃっていましたが、作業がまったく進んでいないようですね」
趙長官「この文書は、本日初めて見ました」
兪議員「以前にも国政監査で指摘されていたことをご存じでしたか。 議事録は読みましたか」
趙長官「該当部分には目を通しました」
兪議員「昨年の質疑で、( 米軍慰安婦の )女性たちがどのような状況に置かれているのか把握し国がなすべき政策を打ち出すことについては、分かったとのことでした。 関連部分に関して一切進展はなく、長官に報告もしていないようですが、これは問題です」
 この後、言い訳に終始する女性家族省側の答弁を最後まで聞かず兪議員は質疑を打ち切った。

 国会質疑や提出された資料の存在を見る限り、 「テキサス親父」 のユーチューブ動画での発信は、 「虚偽」 とは言えないようだ。