盗作著作権侵害 / 日本の特許多数侵害


( 2012.04.25 )

  


 発電所の変圧器などに使う高性能鋼板で自社の製造技術を不正取得されたとして、新日本製鉄は25日、不正競争防止法などに基づき、韓国鉄鋼大手ポスコなどを相手取り、総額1,000億円の損害賠償 と高性能鋼板の製造・販売差し止めを求める訴訟を19日付で東京地裁に起こした と発表した。

 提訴の対象はポスコと、ポスコの日本法人 「 ポスコジャパン 」 ( 東京都中央区 )、新日鉄で研究開発部門にいた元社員。 新日鉄は米国でも、ポスコを相手取って24日付で提訴した。

 新日鉄は、ポスコが 「 方向性電磁鋼板 」 と呼ばれる高性能鋼板の製造技術を、元社員と共謀して不正に取得し使用していると主張。 新日鉄は自社と技術ライセンス供与先を合わせて方向性電磁鋼板で世界シェアの過半を占めるが、2000年代後半から販売しているポスコも近年台頭しているという。 新日鉄はこれまでポスコに対して警告などをしてきたが、 「 問題解決の端緒が見えず、提訴に踏み切った 」 としている。

 訴えに対し、ポスコジャパンの担当者は 「 詳しい内容や状況を確認している 」 とコメントしている。

 新日鉄はポスコと株式を相互保有し、2000年からは戦略的な提携関係にあるが、方向性電磁鋼板の技術は提携の対象から外した。 ただ、新日鉄は 「 提携関係を破棄する考えはない 」 としている。




  


 新日本製鉄が、提携関係にある韓国の鉄鋼大手ポスコなどを相手取り、高機能鋼板について、新日鉄が保有する製造技術を不正に取得・使用されたとして、不正競争防止法に基づく民事訴訟を東京地裁に起こした。 「 営業秘密の不正取得行為 」 として約1000億円の損害賠償と、高性能鋼板の製造・販売差し止めを求めている。

 日本企業の退職した社員などを通じ、海外への技術流出は増えているとされながら、これまでまでは確証のない 「 噂 」 の域を出なかった。 今回、新日鉄はひょんなことから 「 証拠 」 を押さえ、提訴に踏み切った。

 

 訴えは4月19日日付で、対象はポスコと、日本法人 「 ポスコジャパン 」 ( 東京都中央区 )、新日鉄で研究開発部門にいた元社員。 新日鉄は米国でも、ポスコを相手取って24日、提訴した。

 問題の鋼板は 「 方向性電磁鋼板 」。 電気を各家庭に送るための変圧器に広く利用される特殊な鋼板。 高機能の電磁鋼板の生産規模は世界で年間約100万トン程度に上り、新日鉄はシェア約3割を占めるトップメーカーだが、ポスコも2004~05年ごろから急激に品質を向上させ、現在のシェアは約2割に達するという。

 通常、企業は新技術を開発したら特許を取得して守るが、製造ノウハウが極めて特殊な場合、特許を取って技術内容を公開するより、徹底的に隠す方が実態として技術を守れる。 今回の特殊な鋼板は、まさにそうした 「 秘中の秘といえる技術 」 という。

 新日鉄は、ポスコが新日鉄元開発担当者から不正に入手しない限り、簡単に製造できるはずがないとの疑惑を持ち続け、繰り返し警告してきたという。 宗岡正二社長は5月14日の会見で、 「 基本的な協調関係は堅持していく 」 と述べ、2000年以来続くポスコとの研究開発や原料調達などでの戦略的提携関係は維持する考えを示す一方、 「 我々が何十年もかけて数百億円を投じて研究開発してきたものを、なぜあれだけ短期間でものにできたか疑問 」 と指摘した。

 

 新日鉄が提訴に踏み切る 「 証拠 」 をつかめたのは、韓国内の 「 事件 」 がきっかけ。 2007年、ポスコから中国メーカーに、問題の鋼板の技術が流出させたとしてポスコ元社員が逮捕された。 この元社員は裁判の中で、 「 流出した技術はポスコのものでなく新日鉄の技術 」 と主張。 裁判では今回の新日鉄元社員の名前も登場したことから、新日鉄が証拠保全手続きで元社員の保有する資料を押さえ、今回の提訴につながった。 まさに 「 幸運のなせる技 」 ( 新日鉄関係者 )だった。

 日本企業の海外進出増加や世界的な人材の流動化、情報技術( IT )の進展などに伴い、鉄鋼以外でも、電機メーカーなどで同様の問題は深刻とされる。 政府は不正競争防止法の罰則を強化し、刑事罰( 営業秘密侵害罪 )を導入したが、刑事裁判に持ち込める例はほとんどない。

 実際に、企業は現在でも、退職者と秘密保持契約や、競業他社への転職を禁止する契約を結ぶなどしている。 新日鉄もこの元社員と秘密保持契約を結んでいた。 しかし、 「 退職した社員の行動を全て把握するのは無理 」 ( 鉄鋼業界筋 )だし、職業選択の自由の観点から転職を制約するのは現実には困難。 契約上の 「 企業秘密 」 の定義もあいまいで、十分に機能していないという。

 それだけに、今回の提訴は産業界の闇に一条の光がさした形で、日本の産業界全体が強い関心を寄せる。 本当に流出に歯止めをかけることができるか、まさに試金石になる。







  


 退職した社員などを介した海外への技術流出に産業界が頭を痛めている。 25日には変圧器などに用いられる特殊な鋼板の製造技術を元社員から不正に取得したとして、新日本製鉄が韓国鉄鋼最大手のポスコを相手取り、計1千億円の損害賠償などを求める民事訴訟を起こした。 電機や機械など他分野でも同様の問題は頻発しており、今回の裁判の行方に注目が集まる。

 26日に都内で定例会見を開いた日本鉄鋼連盟の林田英治・JFEスチール社長は新日鉄の提訴について 「 技術が安易に流されないようにするのは経営の責任だ。 技術侵害に対して厳正に対処すべき 」 と語り、新日鉄の対応を支持する考えを強調した。

 新日鉄によると、同社が世界のトップシェアを握る方向性電磁鋼板の製造技術を、ポスコは新日鉄の元開発担当者から不正に入手し、製造、販売したという。 方向性電磁鋼板は、電圧を変えたときの電力ロスを減らせる機能が特徴。 付加価値の高い製品だ。

 新日鉄は元社員と秘密保持の契約を交わしており、今回ポスコを不正競争防止法( 営業秘密の不正取得行為 )違反で東京地裁に提訴。 米国でも同鋼板の特許侵害でポスコを訴えた。 ポスコは争う構えだ。

 知的財産問題に詳しいTMI総合法律事務所の升永英俊弁護士は、今回の新日鉄による訴訟で、賠償請求額が1千億円という巨額である点に着目する。 「 負ければ市場から撤退せざるをえなくなる額。 知的財産の訴訟が、経営上の大きなリスクとして認識される契機になる 」 とみる。

 電機メーカーなど鉄鋼以外でも、技術流出の問題は深刻。 政府は不正競争防止法の罰則を強化し、刑事罰( 営業秘密侵害罪 )を導入したが、実際に刑事裁判に持ち込めるのはまれだ。

 「 退職した社員の行動や発言を全部把握することは不可能だ 」 ( 鉄鋼関係者 )。 りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員は 「 効率化で企業が社員を大事にしなくなり、社員も忠誠心がなくなっていることが技術流出の根底にあるのでは 」 と指摘。 抜本的な解決策は見いだせない。





( 2014.03.27 )


 特殊鋼板の製造技術を盗用されたとして、新日鉄住金が韓国の鉄鋼大手ポスコなどに約1000億円の損害賠償を求めている訴訟で、新日鉄住金側は26日、ポスコ元幹部の陳述書を東京地裁に証拠として提出した。
 ポスコが組織的に機密情報を技術者から入手していたとする内容だ。 ポスコ側は組織的な関与を否定しているが、裁判所の判断が注目される。




 裁判の証拠の一つとして提出された今回の陳述書が注目されるのは、新日鉄住金が2012年4月に提訴して以来初めて、ポスコの組織的な関与を内部にいた人物が証言している点だ。
 A4用紙33ページに及ぶ陳述書で組織的関与の実態を明らかにしたのは、ポスコの東京研究所( 現在の日本法人・ポスコジャパン )に在籍した韓国人の元研究員。 この人物はポスコの技術を中国の鉄鋼メーカーに不正流出させたとして韓国で有罪判決を受けている。 陳述書では 「 研究所とは名ばかり。 実験設備は何もなく、もっぱら日本の鉄鋼メーカーの情報を収集し、韓国の本社に送っていた 」 と述べた。 また 「 意思決定の総責任者は韓国本社の社長 」 とも指摘した。

【 陳述書のポイント 】
▽ ポスコから 「 永遠に口をふさげ 」 などと言われ、このまま言いなりになっては一生仕事ができなくなると考えて新日鉄に面談を求めた。
▽ 秘密情報を提供した新日鉄OBは、( ポスコから )数十億ウォン( 数億円 )を得ていたと思われる。
▽ ポスコによる技術盗用は、会社として長期間、組織的に行っていた。総責任者は社長で、盗用の事実を厳秘とするよう繰り返し命じていた。
▽ ポスコが独自に取得した特許は、新日鉄から特許侵害を疑われたときに反論するためダミーで取得したもので、実際には使い物にならない。

電磁鋼板訴訟 新日鉄住金が新事実提示 POSCOが組織的盗用

 新日鉄住金が韓国のPOSCOとPOSCOジャパン、旧新日本製鉄( 現新日鉄住金 )元社員を相手取った方向性電磁鋼板の技術不正流出に関する民事訴訟の第7回弁論準備手続きが26日、東京地方裁判所で非公開で開かれた。 新日鉄住金は中国の宝山鋼鉄への機密流出で有罪判決を受けたPOSCO元社員の証言などの新事実を提示した。 技術を独自開発したとするPOSCOの主張を崩す切り札と新日鉄住金はみている。 次回6月5日13時半からの弁論準備手続きでPOSCO側が反論する。
 新日鉄住金は宝鋼への機密提供で有罪判決を受けたPOSCO元社員、李錫柱イソクジュ氏の証言を提示した。 李氏の証言と李氏が提供した38点の資料を通じて、POSCOが組織的に新日鉄元社員を通じて新日鉄の営業秘密を盗用した経緯などが判明。 李氏の証言について、新日鉄住金は元社員自宅などから証拠保全の手続きで入手した多くの資料で裏付けている。
 それによると、POSCOは新日鉄元社員から入手した情報を元に、新日鉄の高級方向性電磁鋼板製造技術、HI-B( 高温スラブ加熱方式 )を商業化するチームを結成。チームには李氏のほか前副社長らが関与しており、新日鉄の技術を実験室レベルで検証した上で、実機化する形で組織的に商業化した。
 POSCO側は公知になった新日鉄の技術は入手したが、高級電磁鋼板製造には不十分なため、独自に技術開発したとして盗用を否定している。 新日鉄住金は今回の新事実でPOSCOの主張が崩せるとみている。
 POSCOが学会などで技術者と接触し、退職後に多額の報酬と引き換えに企業秘密を入手する組織的な手口がその後も新日鉄独自の製造プロセスのSL( 低温スラブ加熱方式 )、ROF( 回転炉床型連続焼鈍炉 )の盗用で繰り返されたと訴える。

新日鉄住金の方向性電磁鋼板 韓国の特許庁特許認めず

 韓国特許庁は、POSCOが請求した新日鉄住金の方向性電磁鋼板の特許無効申し立てに対し、特許を認めないとする判断を下した。 これを受けて新日鉄住金は、 「 当社が保有する方向性電磁鋼板に関する韓国特許4件について、POSCOが申し立てていた特許無効審判について、4件を無効とする審決が2月17日付で発布された。 驚きをもって受け止めている。 内容において極めて不当。 韓国特許法院( 高等裁判所に相当 )に、直ちに審決取消訴訟を提起する予定である 」 とコメントした。
 韓国の現地報道で、米国でも同様に特許が無効となったとされていることについては 「 全くの誤り。 米国特許4件については、2012年9月にPOSCOが特許再審査請求を申し立てているが、基本となる特許1件は既に有効との判断がなされている。 残る3件は特許庁に係属中であり、当社としては同様に有効との判断がなされるものと考えている 」 と全面否定。
 日米での新日鉄住金の訴訟に悪影響があるとの現地報道についても、 「 悪影響は全くない。 日本における訴訟は営業秘密不正取得・不正使用に基づく不正競争防止法違反に関するものであり、特許に関係ない。 米国訴訟は前記の通り特許が維持されており、影響はない 」 と説明した。
 新日鉄住金は12年4月、方向性電磁鋼板に係る技術に関連し、POSCOなどが営業秘密を不正に取得し、使用しているとして、不正競争防止法等に基づき、損害賠償と方向性電磁鋼板の製造・販売等の差し止め等を求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起。 米国においては、POSCOなど対して、米国特許の侵害を理由とする損害賠償および侵害の差し止めを求める民事訴訟を提起している。


( 2015.09.15 )

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 鋼板製品に関する最先端技術を盗用されたとして、新日鉄住金( 東京 )が韓国の鉄鋼最大手ポスコなどを相手取り、不正競争防止法に基づき986億円の損害賠償や製造・販売の差し止めなどを求めた訴訟で、ポスコが和解金名目の約300億円やライセンス料を支払うことで和解協議に入っていることが14日、関係者の話でわかった。

 両社は今月下旬にも、裁判外で和解することで合意する公算が大きく、新日鉄側は東京地裁への提訴を取り下げるとみられる。

 ポスコ側は訴訟で盗用を否定していた。 日本企業から海外企業への技術流出が相次ぎ問題になる中、新日鉄側が盗用に対して厳しい姿勢で臨んだ訴訟が高額の支払いで和解すれば、不正防止に向けて大きな意味を持ちそうだ。

 盗用が疑われているのは、発電所の変圧器などに使われる 「 方向性電磁鋼板 」 の製造技術。 ポスコの技術を中国企業へ漏えいしたとして韓国検察に起訴されたポスコ元研究員( 有罪確定 )が、 「 漏らしたのは新日鉄の技術 」 と供述したことから、新日鉄側は2012年4月、提訴していた。

 新日鉄住金の主張によると、ポスコは1987年頃から、同社日本法人などを通じて組織的に新日鉄( 当時 )の元社員4人に働きかけ、40年以上かけて改良を重ねた技術資料を不正に持ち出させる代わりに、多額の報酬を支払ったという。 この技術をポスコが使った結果、 「 新日鉄の市場での優位性が著しく損なわれた 」 としていた。

 ポスコ側は訴訟で 「盗用は事実無根」 などと反論し、請求棄却を求めた。 新日鉄住金側は、元社員から聞き取りを進めるなどして多数の証拠を提出。 13年7月にはポスコ側が、盗用は否定しつつ、新日鉄の機密資料の一部を入手したと認める書面を提出したことが明らかになっていた。

 関係者によると、和解協議は、ポスコが和解金を支払うことに加え、この技術を利用して輸出などを行う際はライセンス料を支払う方向で進められているという。 方向性電磁鋼板は、電力インフラが整っていない新興国などでの需要拡大が見込まれている。

 新日鉄住金は和解協議について 「 係争中なのでコメントできない 」 と回答。 ポスコの広報担当者は 「 訴訟と交渉が進行中で確定したものはなく、コメントはできない 」 としている。





( 2015.11.03 )

  
    


 韓国の鉄鋼最大手ポスコが “パクリ” のツケを払わされた。 新日鉄住金からの技術盗用をめぐる訴訟で支払った和解金が経営を直撃し、今年7~9月期の連結決算で最終赤字に転落したのだ。 韓国企業は2000年代半ばから飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げてきたが、その裏では 「 産業スパイ 」 の暗躍も指摘されてきた。 ポスコの “凋落” はもはや、そんな手口が通じないことを知らしめている。




 「 創業以来、最大の試練 」。 韓国紙はポスコの現状をこう報じている。

 朝鮮日報によると、同社は10月20日、今年7~9月期の最終損益が連結ベースで6580億ウォン( 697億円 )の赤字だったと発表した。 円安による為替損失( 3800億ウォン )や保有鉱山の評価損( 3880億ウォン )と並んで、新日鉄住金に対する和解金2990億ウォン( 約317億円 )が響いた。

 ポスコが和解金を支払ったのは9月30日。 新日鉄住金も同日、日本と米国で起こしていた訴訟を取り下げ、和解の成立を発表した。

 訴訟対象となっていたのは、電気を家庭に送る変圧器などに使われる 「 方向性電磁鋼板 」。 新日鉄住金は新日本製鉄時代の12年4月、同社の複数の元社員からポスコが技術情報を不正入手したとして、不正競争防止法に基づき986億円の損害賠償や製造販売差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。 このほか、米ニュージャージー州連邦地裁にも同様の訴えを提起していた。

 和解について新日鉄住金は 「 所期の目的を一定程度満たすに足る条件を確保できた 」 としている。 ポスコによる方向性電磁鋼板の販売を制限できるほか、同社からの技術使用料収入が見込めるからだ。

 ハンギョレ新聞によると、両社はポスコが今後、同鋼板の輸出の際に技術使用料を新日鉄住金に支払い、地域別の輸出量も協議して決めることで合意した。

 ポスコにとっては、業績への打撃は一時的なものにとどまらないことを意味する。 折から、同社は安価な中国製鋼材との競争にもさらされており、日中メーカーに挟み撃ちされて埋没しかねない状況だ。

 ポスコは15年に2兆ウォン( 約2100億円 )の最終利益達成を目標に掲げているが、逆に 「 3000億ウォン( 約310億円 )程度の赤字も予想される 」 ( ハンギョレ新聞 )という。




 問題となった方向性電磁鋼板は電力インフラに欠かせない変圧器の心臓部である 「 鉄心 」 に使われ、技術の粋を凝らした “鉄の芸術品” ともいわれる。 旧新日鉄の独壇場だったが、05年ごろからなぜかポスコの製品技術が急激に向上し、シェアも拡大してきた。

 ポスコの技術盗用疑惑が浮上したのは07年。 韓国・大邱での刑事訴訟で、ポスコの機密情報を中国メーカーに流したとされるポスコ元社員が 「 技術は、もともとは新日鉄のものだ 」 と衝撃的な証言を行った。

 旧新日鉄は、製造技術を持ち出したとされる元部長級社員の自宅から、ポスコとの通信履歴などの証拠を裁判所を通じて確保した。 この 「 動かぬ証拠 」 が法廷でも大きな武器となった。

 そもそも、ポスコにとって旧新日鉄は 「 育ての親 」 ともいえる存在だ。 ポスコは1960年代、旧新日鉄の前身である八幡製鉄や富士製鉄から技術供与を受けて設立した。 2000年には、旧新日鉄と戦略的提携契約を結んでいる。

 ポスコの窮状は自前の技術を育ててこなかったツケが回ったともいえる。 裏切りの代償は高く付いた形だ。




 「 あなたの持っている技術を売りませんか。 数億円を支払う用意があります 」。 経済産業省の調査によると、学会や講演会で著名な日本の技術者に目星を付け、接触するのが産業スパイの手口の一つだ。 技術者は勤務先の企業から製造ノウハウなど技術の根幹部分を持ち出し、退職後に売り渡す。

 1990年代以降、大手企業が相次いで実施したリストラで、技術者が韓国や中国の競合企業に転職したことも不正な技術流出の要因になったとみられている。 経産省の調査では、流出先として中国、韓国を挙げた例が多く、回答企業の5割が中途退職者を通じた流出を指摘した。

 不正な技術流出をめぐっては昨年、東芝が韓国のSKハイニックスに半導体データを盗まれたとして提訴し、韓国側は和解金として約330億円を支払った経緯もある。

 ただ、これまで大半の日本企業は情報流出が疑われる事例を前に 「 証拠が手に入らない 」 として、泣き寝入りを余儀なくされてきた。

 新日鉄住金とポスコの訴訟は政府が産業スパイの横行に歯止めをかける契機にもなった。 今年7月に成立した改正不正競争防止法では、外国企業への漏洩について厳罰化し、最大で10億円の罰金を科すことにした。 被害を受けた企業の負担を軽減するため、相手企業に不正に技術を取得した事実がないことの立証責任も負わせた。 新日鉄住金とポスコの訴訟が高額の和解金を伴う形で決着したこととあわせて、スパイ行為の抑止力となりそうだ。

 とはいえ、自社技術を守るのは、あくまで企業自身であることは今後も変わらない。 技術流出で競争力を失う事態を防ぐには、被害を受けた企業が毅然と対応することが不可欠となる。