「在日特権」
  ある のか ない のか
    徹底的に調べてみた

 いわゆる 「在日特権」 を論じるには、必ずヘイトスピーチ問題がつきまとってきた。 在日特権を問題視する側は感情的な在日批判に終始し、もう一方の側は在日特権だと指摘しただけで差別主義者のレッテルを貼ってきた。
 そのなかで置き去りにしてきたのは、 「果たして在日特権はあるのは、ないのか。 あるとしたらどのようなものか」、という冷静かつ客観的な分析である。

 戦後70年、日韓基本条約締結から50年の今年は大きな節目となる

 

 在日特権が論じられる際、しばしば俎上に載せられるのが 「特別永住者制度」 の問題だ。 在日コリアンなどに認められたこの制度についていまどう考えるべきなのか。
先日、在特会( 在日特権を許さない市民の会 )の元幹部と話をする機会があった。 彼は 「 当初、在特会の主張には説得力があり共感する人も多かったのだが、途中からヘイトスピーチをするようになり、違和感や嫌悪感を抱いた人々が次々と会を離れていった。 自分もその1人だ 」 と、脱会の理由を語っていた。
 私も在特会の主張の仕方には断固反対だ。 ヘイトスピーチは単なる民族差別であり、彼らの言動により保守の言論・運動までもが 「 レイシズム 」 と十把一絡げに論じられる風潮に憂慮の念を禁じえない。
 そもそも 「 在日特権 」 に関わる言説は、在日の人々へ向けられるべきものではない。 日本の制度上の問題点を問うべき性質のものだ。
 そこで、一般の外国人や、一定の要件を満たし永住を許可された 「 一般永住者 」 と異なり、原則無条件で日本に永住できる 「 特別永往者制度 」 を考察する。
 特別永往者とは1991年施行の人管特例法で定められた在留資格で、日本の占領下で日本国民とされながら、終戦後に日本国籍を失った( 母国に生活基盤を持たない )韓国・朝鮮人、台湾人とその子孫に付与されている。 戦後の混乱期にさまざまな事情で母国に帰還できなかった人々に対し、日本べの定住性を考慮し永住を許可したものだ。
 そうした歴史的背景が当時としてはあった。 とは言え、戦後70年、日韓基本条約の締結から50年が経ち、在日コリアンは5~6世も登場している。 すでに特別永往者制度の役割は終わったのではないだろうか。


社会保障も日本人と同等

 2013年末時点の特別永往者は37万3221人。 そのうち韓国・朝鮮人が占める割合は全体の99%、36万9249人に上る。
 今日、特別永往者は事実上日本の 「 準国民 」 として扱われており、参政権を除けば日本国民とほぼ同等の権利を有している。 外国人である特別永往者に参政権がないのは当然で、民族差別とは別問題だ。
 現行の日本国憲法が保障する権利や自由は、広く外国人も含め保障されるものと、日本国民だけを対象とするものを性質によって分けている。 これを 「 権利性質説 」 と言う。 参政権や社会保障などの社会権は本来、日本国民だけを対象としたものだ。 国家の意思形成に参画する権利、つまり参政権まで 「 在日の権利 」 と主張するのは無理がある。 参政権が必要であれば、日本国民となり権利を享受すれば良いと考える。
 特別永往者は事実上、年金や生活保護などの社会保障でも日本人と同等の扱いを受けている。 14年7月には最高裁が 「 外国人は生活保護の対象にはならない 」 という判決を出したが、運用は自治体任せというのが実態だ。
 本来、社会保障は国籍のある本国に第一義的責務があり日本が代行する義務はない 「 国家は防衛共同体であり、その構成員を助け合う 」 というのが社会福祉の趣旨だからだ。 たとえば軍人恩給は、国のため戦い傷ついた人を国が面倒を見る、という発想に基づいた制度で、これが現在の年金制度の土台になっている。
 国民年金については、難民条約批准による法改正で82年に国籍条項が撤廃され、外国人である在日コリアンも年金に加入できるようになった。
 その上でなお、彼らは当時35歳以上だった人が年金加入資格を満たせず 「 無年金者 」 となったことに対し、各地で 「 障害者無年金訴訟 」 や 「 高齢者無年金訴訟 」 を起こした。 これらは最高裁まで争われたが、いずれも原告が敗訴しでいる。 在日コリアンはこれを民族差別とするが、あくまで年金制度の不備によるものだ。


日本国籍を取らないメリット

  在米コリアンの多くが米国籍を取得するのはなぜか。 国籍を持たない者は、制度上の差別に直面するからだ。 職業が限定され、州によっては税制面で不利益を被るケースもある。
 ところが 日本では、国籍を取らなくても何らデメリットが生じない。 むしろ、事実として特別永往者は日本と母国を自由に往来し、無制限に財産を形成できるメリットまである。 再入国も容易だ。 特別永往者にとって、日本がとても居心地の良い国であることは間違いないだろう。
 これは在日コリアンの意識の問題ではなく、あくまで制度としての問題である。
 在日コリアンの中には、日本国籍取得のハードルが高いという声もあるが、90年代以降は特別永往者に対する帰化申請の手続きも緩和されている。 日本政府が本腰を入れてこの問題に取り組むのであれば、日本国籍取得のサポートをより拡充すべきだ。
 在日コリアンに対しては外国人( 一般永住者 )として生きるのか、帰化して日本のフルメンバーになるのか、選択を迫ることになる。 それでも、外国から見て明らかに不自然なこの制度は、やはり戦後70周年を節目として見直すべきだと考える。


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使

 在日コリアンが特権を得ていると主張する人々は、特別永住者制度のほか、税金や公共料金の減免、生活保護の優先受給や公営住宅への優先入居、通名の使用などさまざまな優遇措置があると訴える。在日コリアンだけに与えられる特権は本当に存在するのか?



特別永住者制度
歴史的経緯から 「配慮」 されて生まれた


 特別永往者とは、戦前から日本に住んでいた韓国・朝鮮、台湾の人々とその子孫の中で特別永住資格を得た人を指す。
 その他の永往者は一般永往者と呼ばれ、この中には戦後、日本に渡った韓国・朝鮮人も多数含まれている。
 特別永往者が一般永往者や他の日本に住む在留外国人と異なる扱いを受けているのは、地位や規則を定める法律がそもそも異なるからだ。 前者は1991年111日施行の通称 「 入管特例法 」 で、後者は 「 出入国管理及び難民認定法 」 が適用される。
 両者には具体的にどのような差があるのか。 法務省入国管理局に聞いた。
「大きな違いは退去強制事由です。 特別永往者に適用される入管特例法では、国家の治安などに関わる重大犯罪( 内乱罪や外患誘致罪で実刑判決を受けた者など )でない限り強制退去となりません。 一方、一般永往者やその他の在留外国人に適用される出入国管理及び難民認定法では、強制退去となる犯罪の種類( 売春業 に従事する者や薬物犯罪で有罪判決を受けた者など )がとても多く、20項目以上が定められています」
 また2007年からは、16歳未満の者や外交官などを除く一般在留外国人に対し、入国時の指紋採取と顔写真の撮影が義務付けられるようになった。 特別永往者はこれも免除されている
 さらに、 「 再入国許可 」 も一般在留外国人が最長5年であるのに対し、特別永往者は6年。 「 みなし再入国許可 」 は通常1年以内に帰国しなければならないが、特別永往者は2年まで認められている。
 なお、特別永往者の帰化申請には書類( 帰化動機書など )の免除があるが、要件については国籍法が適用され、一般在留外国人との差はない。
 法務省入国管理局は、特別永往者制度が生まれた背景について、
「戦前に日本人と同じように生活をしていながら、ある日突然、国籍を失った経緯がある特別永往者に対しては、一般の外国人の方と区別し配慮する方針で法律が制定された」
 と話す。
 特別永往者制度を特権とみなすかどうかは、こうした歴史的背景をどラ考えるかが重要になる。



生活保護
在日コリアンの受給率が高い理由


 在日コリアンは生活保護を優先的に受給しているのではないかとの批判がある。 法務省の12年の統計によると、在日コリアン( 特別永住権を持たない一般在留者を含む )の人口総数は53万46人。 また、厚生労働省の同年統計では、その内、生活保護受給者数は3万8299人で、受給率は約7%となる。 次いで多いのはフィリピン人の6.6%だが、これはシングルマザーとして暮らす女性が多いからと考えられている。 なお、同年の日本人全体の受給率は約1.6%。 中国人は1.3%、ブラジル人は1.5%なので相対的に高い数字だ。
 この数字について厚生労働省の見解を聞いた。
「統計にあるように、韓国・朝鮮籍の受給者が日本人及び他の外国籍の方に比べて多いのは事実。 ただし、そのなかで圧倒的に多いのは高齢者の方たちです」
( 総務課広報室 )
 同統計によると、60歳以上の在日コリアンの受給者数は2万3402人。 在日コリアンの受給者数の約61%を占めていた。 なぜ高齢在日コリアンの生活保護受給率が突出しているのか。 在日コリアンの事情に詳しいジャーナリスト・野村旗守氏はこう指摘する。
「戦前から日本で暮らしていた在日1世に近い世代が、貧困状態に置かれる社会的背景があったことは間違いありません。 同時に60年代から70年代には、韓国・朝鮮の民族団体や彼らを支援していた共産党が当局に交渉するノウハウを持っていた。 そうした団体から歴史的経緯を説かれると自治体の窓口レベルでは対応しきれず、審査が緩くなってしまうケースもあったのではないでしょうか」
 複数の自治体に取材したところ、ある自治体の保護課担当者は 「 昔のことはよく分からない 」 と前置きした上でこう語った。
「いかなる歴史的背景があれ、現在、優先的に生活保護が給付される対象はいません。 日本人と同様、あくまでも規則に沿って申請を受け付けているだけです」
 厚労省も同様の回答だった。
「生活保護の支給は、所得や財産などをチェックして自治体が決めます。 それは、他の外国人でも同じです。 韓国・朝鮮籍の受給者は、高齢化に則して少しずつ増えていますが、日本人も含めて全体的に微増している。 特定の国籍の方が大幅に増えたとは言えません」
( 前出・総務課広報室 )
 ちなみに、ネット上で在日特権とされるものの中には、 「 水道代や電気代などの光熱費免除 」 や 「 公営住宅の優先入居権 」 というものがあるが、関係各所に取材したところ、これらはすべて 「 事実ではない 」 との回答だった。
 ただし、水道料金については自治体によって生活保護受給者に対する免除規定がある。 これは生活保護を受ける日本人や他の外国人に対しても適用されている。 在日コリアンだけが光熱費を免除されているという噂は、 「 生活保護を優先的に受給しているのではないか 」 という話から派生したものと考えられる。



税金
過去には在日コリアンへの税の減額措置があった


 在日コリアンが経営する企業や商店に対しては、 「 納税における優遇措置 」 があるとも言われてきた。 前出・野村氏が語る。
「76年には、国税庁と朝鮮総連系の在日本朝鮮商工連合会の間で密約が交わされ、税に関する合意があったと言われています。 国税庁は一貫して否定していますが、総連側には、権利の獲得の歴史として資料が残っています」
 野村氏によれば、合意内容には、在日本朝鮮商工連合会会員のすべての税金問題は両者が協議して解決することなどが盛り込まれたという。
 これについて国税庁は、
「特定の団体やその会員に特別な取り扱いをすることはあり得ず、在日本朝鮮商工連合会との合意事項というものはありません」
 と否定。 在日本朝鮮商工連合会からは締め切りまでに回答を得られなかった。
 この合意により、総連系商工会会員の中には、税負担が減った者もいたと言われている。 当時の状況を知る商工会会員が振り返る。
「戦争や差別を経験した在日1世には 『日本に税金を取られてたまるか!』 という意識の強い人が多かったのは事実。 60~80年代には総連の力が強く、国税当局を相手に何らかの措置をとらせることができたのではないか」
 ただし06年、当時の安倍政権が北朝鮮に対する 「 厳格な法執行 」 の政府方針を打ち出すと、総連系商工会の幹部らが税理士法違反でたびたび摘発されるようになったため、 「 今では当局に圧力をかけることは不可能 」 ( 総連系の実業家 )という。
 また、納税については、07年に三重県の自治体が、在日コリアンを対象に住民税を最大半額に減額していたことが相次いで発覚している。
「これも生活保護と同様、過去に在日コリアンが団体交渉するノウハウを持っていたことから生じた問題。 類似のケースは他の自治体でもあったのではないでしょうか。 ただし、ここ数年に発覚した事件は過去の残滓と言うべきではないか」
( 前出・野村氏 )


民族学校・教育
他の外国人学校と変わらない


 教育面では、韓国・朝鮮学校への補助金が在日特権ではないかとの主張がある。 朝鮮学校および一部の韓国学校は、他の外国人学校と同じく 「 各種学校 」 扱いだ。 各種学校への補助金は各ぽ治体の裁量で拠出されるが、韓国・朝鮮学校だけの優遇措置は存在するのか。 在日コリアンが多く住む地域の自治体に話を聞いた。
「外国人学校の補助金については、当該事業に定めた要項に従い支給する。 朝鮮学校は要項に合わないため現在凍結している。 韓国・朝鮮学校だけ特別ルールがあるわけではない」
( 大阪府・私学・大学課 )

「14年から外国人学校に対する補助金を全廃し、学費補助の形をとっている。 保護者の収入が高い場合は支援対象外になることもある」
( 神奈川県・私学振興課 )

「県内の外国人学校への補助金は同一のルールで行なっている。 朝鮮学校だから云々ということはあり得ない」
( 兵庫県・私学教育課 )
 朝鮮学校については、東京や大阪のように補助金を凍結する自治体があるほか、高校授業料無償化についても唯一、適用の対象外となっている。
 加えて、朝鮮学校を巡る特権説の中には、 「 各種学校なのに学割定期券を受けることができる 」 というものがある。
 そこで、JR東日本およびJR西日本に問い合わせてみると、各種学校の学割は 「 朝鮮学校だけではない 」 との回答が寄せられた。
 適用対象および申請方法については、旅客営業規則の 「 学校及び救護施設指定取扱規則 」 に則って処理されているという。
 ただし歴史的経緯として、各種学校に対する割引の適用は、もともと朝鮮学校通学者の保護者の署名活動から始まったことは間違いない



通名
過去には通名の変更が容易で犯罪に使われたケースもある


 通名( 通称 )とは、在日コリアンに限らず日本で暮らす在留外国人の社会生活の利便性を考慮して使用される日本式の名前のことだ。 行政の運用上、使用が認められてきた経緯がある。
 総務省によると、長年日本に住む外国人が周囲から通名を認知されており、通名の使用実績が証明できる場合は役所に届け出て登録が認められるという。
「12年7月9日より、在留外国人の方も住民基本台帳に記載されるようになりました。 それ以前の外国人登録には通称名が記載されていたため、住民基本台帳もその制度を引き継いでいます」
( 総務省・外国人住民基本台帳室 )
 ちなみに、市町村や行政機関などが発行する各種証明書( 住民票や運転免許証など )は本名のみか、本名と通名の併記が原則だ。 ところが、国民健康保険証については、
「外国人の氏名の記載方法は各市町村の裁量で決まる」
( 厚生労働省・国民健康保険課 )
 というように、ガイドラインが統一されていないケースもあった。 実際に東京都では、在日コリアンの通名のみを記載している自治体もある。
 問題は、通名を悪用した犯罪がたびたび発生していることだ。 13年11月、6つの通名を利用し160台の携帯電話を販売した在日韓国人の男が逮捕された。 男は 「 自分と同じ名前の人間が犯罪を起こして迷惑している 」 などと役所に嘘を申し出て、10年10月から13年9月の問に5回も通名を変更していたという。 通名はそれほど簡単に変えられるものなのだろうか。
「そもそも通名は 原則 変更できません」
 前出の総務省・外国人住民基本台帳室はこう断言するが、実はこの事件が発覚した直後の13年11、総務省は各自治体に対し 「 通名記載の厳格運用 」 と 「原則として通名の変更を認めない」 ことを求める通達を出している。
「通達は、通名を悪用した事件が起きないよう原則通りの運用を求める趣旨で出しました。 通達を受けたある自治体から 『今後は通名の変更ができなくなるのか』 という問い合わせもありました」
( 同前 )
 と言うことは、これまでは行政の判断により通名変更が受理されるケースもあったということだ。
「過去には、在日コリアンが通名と本名を使い分けて銀行口座を開設し、相続税を免れていたケースもありました」
( 前出・野村氏 )
 メガバンク3行( 三菱東京UFJ・三井住友・みずほ )に確認すると、現在は07年施行の 「犯罪収益移転防止法」 などに定められた本人確認書類がないと取引は不可能とのことだったが、今後も通名が犯罪利用される可能性は否定できない
 通名については、メディアの報道姿勢に対しても指摘が多い。 いわゆる “通名報道” への批判だ。
 たとえば、13年1月に静岡・下田で発生したホテル放火事件を巡る報道で、大手3紙と通信社は逮捕された韓国籍の男の名前を次のように報じた。
【朝日新聞】 「東京都町田市木曽東IT目、谷出穂秀容疑者」
【毎日新聞】 「不動産会社の社長、康徳秀容疑者」
【読売新聞】 「韓国籍で東京都町田市木曽東、会社役員谷出穂秀こと康徳秀容疑者」
【共同通信】 「韓国籍の会社役員康徳秀容疑者」
 そこで、外国人犯罪を報道する際、大手新聞・通信社がどのような基準で本名と通名を記載しているのか問い合わせた。
 結果、産経新聞社と共同通信社はともに原則本名を記載。 読売新聞社は 「 戸籍上の氏名が原則となり、通称を報じる必要がある場合は本名と通称を併記する 」 という。 毎日新聞社は、 「 併記する場合と本名のみを表記する場合がある 」 とのことだった。
 朝日新聞社は自社発行の報道指針をまとめた冊子の中で、実名および通名について触れている。 その一部を抜粋する。
「とくに朝鮮半島出身者の場合、歴史的な経緯があるので注意が必要だ。 ( 中略 )こうした事情を総合的に判断して、一般に本名よりも通名、通称で生活、通用している人については、通名、通称表記を選択する」
 先に挙げた例のように、通名だけで報じる場合もあるが、朝日新聞も基本的にはケースバイケースで 「 必要があると判断した場合は本名と通名を併記、或いは本名のみを表記することもある 」 そうだ。
 在日特権を論じる際には、さまざまな角度からその歴史的経緯と現状を検証することが必要だ。